【格闘技】QUINTET後楽園ホール大会=元柔道全日本の小見川&内柴の「TEAM WOLF」が初優勝

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QUINTETで「TEAM WOLF」が初優勝(左からグラント・ボグダノフ、小見川、伊藤盛一郎、内柴、森戸新士=撮影:丸井 乙生)

寝技の格闘技イベント「QUINTET」の後楽園ホール大会が13日、東京・水道橋で行われた。柔道元全日本代表の小見川道大(NEO JUDO ACADEMY 小見川道場)、内柴正人(フリー)の「TEAM WOLF」が、5対5による勝ち抜き戦(軽量級/合計体重360キロ)の団体戦決勝に進出。大将戦までもつれ込んだ末、初戦で2人抜きの森戸新士(広島・藤田柔術)が中村大介(総合格闘技夕月本舗)から腕ひしぎ十字固めをきめて一本勝ちを収め、QUINTET初優勝を飾った。

今大会のキャッチフレーズ「世界に先駆け、五人ピック、開催。」をそのままに、柔道の元全日本代表・小見川、五輪柔道連覇の内柴がQUINTET軽量級の頂点に輝いた。

 

 

〝五人ピック〟は柔道元全日本が初優勝

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初優勝を決めた「TEAM WOLF」は歓喜の輪(撮影:丸井 乙生)

一本勝ちを告げるコールの瞬間、「TEAM WOLF」の選手たちがガッツポーズで跳び上がった。チームを率いる小見川が泣いている。そこに、柔道時代から親交が深い内柴が歩み寄り、喜びを分かち合った。

「このチームは最高です。本当にうれしいですし、感謝しています」(小見川)

 

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感涙の小見川(左)に歩み寄る内柴(撮影:丸井 乙生)

2人の親交は長く、柔道の現役時代は国際大会に共に遠征し、一時期は66キロ級で覇を競ったこともある。17年9月に出所した内柴は柔術を始め、18年にはキルギス共和国の柔道総監督に就任。19年の帰国後は地元・熊本県内の温浴施設に勤務しながら、柔術を続けていた。

人生の立て直しに励む内柴を、小見川は自身のチームに誘って20年10月のQUINTETに初出場させていた。

 

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キャプテンの小見川を胴上げする「TEAM WOLF」(撮影:丸井 乙生)

今大会は、7月23日に開幕するオリンピックを前に、今大会は5対5で勝ち抜き戦を行うQUINTETならではのキャッチフレーズとして「五人ピック」と銘打った。そのキャッチコピー通り、柔道元全日本の小見川、そして2004年アテネ、 2008年北京五輪の柔道男子66キロ級を連覇した内柴が共に戦い、チームとして優勝した。

 

QUINTET2戦目の内柴は初勝利ならずも

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今大会の初戦で内柴(左)は先鋒で出場して引き分け(撮影:丸井 乙生)

20年10月の初出場以来、内柴は2度目のQUINTET見参。初出場時はチームが初戦で敗れ、次鋒として出場した自身も強豪・世羅智茂(CARPE DIEM)と引き分けていた。

 

前回は勤務先に反対されながらの出場だったが、今大会はスタッフをはじめ、社長のOKももらった上で参戦できることに。温浴施設でマネジャーの仕事をしながら練習時間もつくり、柔道指導を頼まれた大学生にも柔術ジムでの練習相手を逆に頼み込んだ。ほかにも、各地に1泊2日のとんぼ返りで出稽古に行きながら、準備を整えてきた。 

 

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今大会で大車輪の活躍を見せた「TEAM WOLF」の森戸(撮影:丸井 乙生)

試合は先鋒として出場した初戦の「TRI-FORCE」戦は国士舘大の後輩にあたる平田直樹(トライフォース池袋)に引き分け、中堅・森戸が2人抜きで相手の大将・鈴木和宏(トライフォース柔術アカデミー)を引きずり出し、時間切れで決勝進出を決めた。

 

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決勝ではスタンディングで組手争いも(撮影:丸井 乙生)

決勝では、UFC経験者の猛者・小谷直之(ロデオスタイル)と共に副将戦で対戦も引き分け、勝利の行方は大将戦に託された。ここで大将・森戸が、一本勝ちを得意とする中村へ逆に腕ひしぎ十字固めをきめて劇的な一本勝ち。

劇的な勝利は熊本にもリアルタイムで届いており、内柴の勤務先のロビーでは、テレビで〝パブリック・ビューイング〟が行われていたという。

 

 メダルは「だんご3兄弟」モチーフ

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メダルを授与されてほほえむ内柴氏(撮影:丸井 乙生)

7月23日開幕のオリンピックを前に、五輪の金メダルを2個持っている内柴は大会プロデューサーの桜庭和志から「だんご3兄弟」を模したメダルを授与された。 

「これまで一番うれしかったのは(20年に柔術の)茶帯をもらったことでした。このメダルはうれしいことの2つめです」

団体戦の優勝は学生時代までさかのぼるといい、「チームで戦っていると、苦しい時でも頑張ることができます」と、過去2度の五輪で得た金メダルとはまた違った喜びを感じたという。

「勉強してきたいろんなことを出せなかったことは悔しい。でも、この勝利を持って帰れる」と熊本の勤務先で応援してくれたスタッフ、社長に思いをはせた。

 

小見川「一匹狼に戻って また集結します」 

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試合後の記念撮影。前列が優勝の「TEAM WOLF」、後列が準優勝の「THE BODY RIDE」

(撮影:丸井 乙生)

大会に向けて、「TEAM WOLF」は各選手がそれぞれ神奈川、広島、熊本など居住先が異なる中で、LINEでグループをつくって連絡を取り合いつつ、一丸となって試合に入っていけたという。

キャプテンの小見川は「こうやって優勝できたことに誇りを持って、それぞれがまた一匹狼に戻って歩いて行ければ。そして、また(試合がある時に)集結します」と充実感をにじませた。

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試合が終わり、柔道時代は走り込みの場でもあった東京ドームシティを後にする内柴氏(撮影:丸井 乙生)

内柴は初戦とは違い、足関節を取りに行くなど進化を見せた。それでも一本を取れなかったことを悔しがりつつ、今後の修練にも目を向けた。

「僕はまだヘタクソで、ヘタクソなりに引き分けたわけですが、これからもっと練習を積んで、一本を取りたいという思いとテクニックが一致した時に充実感を味わえると思います。僕はゼロから再出発した人間なので、柔術で人の輪が広がっていくことがとてもうれしい」

 

 (丸井 乙生)