【柔道】柔道家・小見川道大による〝全国チェーンの骨太体験塾〟「Enjoy Judo」始動~先駆けの稲刈りイベント

稲刈り終了後、子どもたちと保護者は充実の笑顔。背後には筑波山(撮影:丸井 乙生)

2022年2月に総合格闘技を引退した柔道家の小見川道大(NEO JUDO ACADEMY 小見川道場代表)が9月25日、茨城県常総市で稲刈り体験イベントを行った。

このほど、「生きる力を身につける」体験の場を提供する一般社団法人「Enjoy Judo」を設立。今回は小見川道場の道場生約30人がその活動の先駆けとして、5月に田植えを行った稲を刈り取り、コシヒカリ400キロ相当を収穫した。

「Enjoy Judo」は全国の道場との連携を目指すもので、柔道だけにとどまらず、自然と親しむイベントや他競技との交流も予定。

小見川は自身の道場で柔道をベースとしたエクササイズからトップ選手まで幅広く指導しており、柔道の精神「自他共栄」をもって〝第三の人生〟で社会貢献していく。

 

 

 

生きる力を身につける

稲刈りに励む小見川道場の子どもたち(撮影:丸井 乙生)

快晴の下、子どもたちが長靴を履いて田んぼに降り立った。小見川は自分もカマを手にしながら、その様子を笑顔で見つめる。

2022年6月に一般社団法人「Enjoy Judo」を設立。自身が主宰する柔道場「NEO JUDO ACADEMY」も含め、全国の道場と連携するネットワークづくりに着手した。その活動の先駆けが今回の稲刈りイベントだ。

 

参加した幼稚園児も、保護者が一緒に作業する中で上手に刈り取った(撮影:丸井 乙生)

「都会の子どもたちは、昔の子どもが当たり前に経験していたことがなかなかできない環境にあります。例えば、このカマも『危ないから』触ったことがないわけです。そうすると、ずっと知らないまま生きていくことになる。柔道は勝つことだけが目的ではないので、柔道を通していろんなことを体験して、生きる力を身につけていってほしいと思うんです」

 

手でやることで達成感

稲刈りイベントを実施した小見川(撮影:丸井 乙生)

小見川は茨城県常総市で生まれ育った。出身である地元の柔道クラブ「石下柔道部」の後輩にあたる農家の稲葉厚さんから10アール(1000平方メートル)の田んぼを提供してもらい、2022年5月に子どもたちと一緒に田植えを行っていた。

その稲がようやく実り、今回は待ちに待った収穫。この日初めてカマを手にした子どもたちも多かったが、みるみるうちに上達した。

時にはカエル捕獲に気を取られ、最多16匹をつかまえた子もいたが、連係しながら徐々に作業はスピードアップ。作業終盤には小見川が時折「よいしょ!」を掛け声を入れ、田んぼを提供した稲葉さんも驚く約3時間ほどで作業を終えた。

 

10アールの田んぼに実っていた稲を約3時間で収穫。左は稲刈り前、右はその後(撮影:丸井 乙生)

「最初は〝小内刈のように足で刈れ!〟と言っていたのですが(笑)、子どもは覚えるのが早いですね。柔道の技もそうです。稲刈りはもう機械でやるものですが、あえて手でやることで達成感があるんです」

 

初心者からトップ選手まで幅広く指導

一般社団法人「Enjoy Judo」設立で全国的な社会貢献活動を目指す小見川道大氏(撮影:丸井 乙生)

小見川は柔道選手ととして現役時代、ハンガリー国際優勝、ドイツ国際準優勝、嘉納治五郎杯準優勝など数々の実績を持つ。

04年アテネ五輪の代表選考会で敗れた後、第二の人生として総合格闘技に転向した。05年PRIDE武士道でデビューすると、07年には世界最高の大会「UFC」に初参戦した。その後も国内外トップクラスの大会に出場を続け、22年2・26 DEEP後楽園ホール大会で18年間の総合格闘技生活から引退した。


柔道では「NEO JUDO ACADEMY 小見川道場」を主宰し、初心者、幼少クラスからトップ選手まで幅広く指導する。格闘技クラス、柔術クラスも行うほか、22年7月には柔道の動きを取り入れたエクササイズコースを新設して〝小見川道大を投げまくれる〟というユニークな試みも実践。かつての日本代表選手は、広い懐で柔道と向き合っている。

 

人生にとって大事なことを伝えたい

稲刈り後、根っこがない安全なスペースで子どもたちに技をかけられる小見川(撮影:丸井 乙生)

収穫した米は脱穀、乾燥、もみすりを経て精米。後日、この米で「おにぎり会」を開く予定。この日の参加者で、大人顔負けの仕事ぶりを見せた吉濱優希くん(中2)は「たくさん実っている稲を見てうれしかったです」と笑顔。将来は柔道家になりたいという後閑晴貴くん(小3)は「思っていたより簡単でした。疲れたけれど、楽しかった」と話した。

 

作業をするうちに、子どもたちは協力しながら事を進めていくように(撮影:丸井 乙生)

「Enjoy Judo」はいわば、骨太な体験塾の全国チェーンだ。

全国各地の道場と連携する〝ボランタリー・チェーン〟を目指しており、柔道の定期的な練習試合や大会、教室、夏合宿のほか、米作り、登山など自然と親しむイベントの実施を予定。他競技との交流なども見据えるなど、柔道には限らない体験を提供する方針で、「生きる力」を身につけることを目的とする。

「柔道は、投げられたら起きないといけない。柔道を通して、人生にとって大事なことを伝えていきたい」

柔道選手、総合格闘家の現役生活を終えた小見川は柔道家として、〝第三の人生〟で子どもたちの未来をつくっていく。

(丸井 乙生)

 

 

「柔米」のビジュアル(提供:Enjoy Judo事務局)

◆「柔米」販売へ

この日収穫した米は「柔米(やわらまい)」と命名され、今後は田植えと稲刈りイベントを実施しながら、その収穫米の販売を来年から予定。パッケージには小見川が礼をするイラストに、座右の銘「実るほど 頭(こうべ)を垂れる 稲穂かな」がデザインされている。

 

 

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