【連載「生きる理由」91】柔道金メダリスト・内柴正人氏 「自分の柔道は細かすぎる話」

2017年秋、再出発の道としてトレーニングジム経営も模索していた当時(撮影:丸井 乙生)

2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。

これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「自分の柔道は細かすぎる話」。
求められて指導しながら、技術の伝え方を思い出してきたという。
改めて気づいたことが、自分でもうんざりするほどの「細かすぎる技術」。
その技術を習得しようとする弟子たちに、伝えたいこととは。

 

 

 

面白い夏を過ごした

ちょうど5年前の2017年秋、さまざまな人から連絡が来ていた(撮影:丸井 乙生)

こんにちは、内柴です。
この夏は元教え子・キルギス共和国の選手たちがひと夏、僕の職場で過ごし、大阪の大家族・谷口家が大阪〜熊本を何往復しただろう。
共に過ごしました。

先日はハーフ柔道選手・中野兄弟が数日ここでトレーニングをしておりまして。

それでまた、谷口家。
今度は
谷口家と共に熊本・人吉市で柔道教室。

面白い夏を過ごすことが出来ました。

 

自分でもうんざりするほど「細かすぎる技術」

2022年夏は柔道チャリティーセミナーを4回開催(撮影:丸井 乙生)

柔道教室だけで4回。
愛知、東京、大阪、人吉。

分かったことは、数をこなすと詳しくなる。
詳しくなるというより、
伝え方を思い出してくる。

そうして、
自分の柔道は人と比べると、細かすぎることに自分でうんざりする。

若い時の僕は
センスがなかったんだろう。
それでいて目標は世界一なものだから、悩んだんでしょうねえ。

悩み続けて出た答えが「細かすぎる技術」。

 

手品の種が分かっても

勤務して3年目の職場では、たいていの物は修理できるようになった(写真:本人提供)

これ、
僕の中にはっきりとした答えがあり、人にも言うのですが、
僕の技術なんかなくたって柔道は勝てる。
強いやつは強く、
弱いやつは弱い。

必要なら教える。
そのまま真似は出来ないだろうけれど、参考にはなる。

手品の種が分かったところで、
自分でその手品を上手にやりこなすには何年もかかるように
僕が考えた柔道なんて、知ったところでそのまま真似できません。

 

技術を使いこなすには〝体力〟が必要

連覇した2008年北京五輪の柔道日本代表の記念プレート。内柴氏のサインは上段左から2番目(撮影:丸井 乙生)

だって、
僕が乱取りなどでその技術を使えるようになるために
毎日、練習してトレーニングしてやっと使えるものなのです。

何年もかかっているんです。

簡単にできるわけがない。


(内柴 正人=この項つづく)

 

◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信      

内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。

より詳しい内容について、メンバーシップ配信も開始した。

詳細は下記YouTubeのコミュニティ欄へ。

 

www.youtube.com

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うちしば・まさと

1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。

 

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