【行ったつもりシリーズ】三浦半島一周サイクリングで灯台めぐり<1>横須賀市街から観音崎へ

秋の三浦半島一周サイクリング、軍港の街、横須賀からスタート!
(撮影:光石 達哉)

読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。

今回は神奈川県の三浦半島をサイクリングで一周。ルート沿いにある灯台やサイクリングのモニュメント、秋の花をめぐりつつ、デジタルスタンプラリーにも挑戦。初回は横須賀市街地から観音崎まで走っていく。

 

 

 海軍の街「横須賀」 ヴェルニー公園からどぶ板通りへ

JR横須賀駅前の「ヴェルニー公園」。フランス人技師ヴェルニーが建設に貢献した旧横須賀製鉄所が、対岸にあることから名づけられた。写真は横須賀で建造された戦艦「陸奥」の主砲。昭和18年、原因不明の爆発によって沈没したが、引き上げられた主砲が展示されている(撮影:光石 達哉)

10月になって涼しさを通り越して肌寒さを感じる日も多くなったが、サイクリングで体を動かすにはまだまだ最適な季節だ。今回は、神奈川県の三浦半島一周に挑戦。夏はレジャーで人気のエリアなので、渋滞で自転車でも通りにくいこともあるが、秋になれば走りやすくなっているだろうと期待を込めて出発。

 

ヴェルニー公園では、9月23日~10月23日まで秋のローズフェスタが開催されている。今回のテーマのひとつが秋の花めぐりでもあったけど、このバラは盛りを過ぎているっぽい(撮影:光石 達哉)

スタート地点は、JR横須賀駅。駅前の「ヴェルニー公園」からは左に海上自衛隊、右に米海軍の横須賀基地が見えて、自衛隊基地には艦船も泊まっている。スタート直後の朝8時にはどこからか米国国歌「星条旗」と「君が代」が連続で流れ、軍港の街であることを感じる。この日は久々の晴れ予報だったけど、この時間はほんのちょっと霧雨が降っていた。

 

かつて道の中央に流れていたドブ川に、旧日本海軍から提供してもらった鉄板でフタをしたことが「どぶ板通り」の名前の由来。現在はアメリカの雰囲気を感じられるお店が多く並ぶが、まだ開店前(撮影:光石 達哉)

JR横須賀駅の東側、国道16号から1本右に入った「どぶ板通り」へ向かう。ミリタリーショップやスカジャンのお店、ハンバーガーショップにバーや海軍カレーのお店などが並ぶアメリカの雰囲気漂う商店街だが、この時間はまだどこもシャッターが閉まっている。

 

 記念艦「三笠」を臨む

「三笠公園」に展示される記念艦「三笠」。全長122m、全幅23mと迫力十分。内部も見学可能だが、ここも時間前だった(撮影:光石 達哉)

国道16号を渡って別の路地に入り、クレイジーケンバンドの歌の通りに「ドン突き」まで行くと「三笠公園」だ。ここは日露戦争を勝利に導いた旧日本海軍の記念艦の中央には当時の連合艦隊司令長官、東郷平八郎の銅像も立っている。

 

連合艦隊司令長官・東郷平八郎の銅像が立つ。左の石碑には、「坂の上の雲」の主人公の1人、秋山真之作戦参謀が考え、東郷司令長官がZ旗と呼ばれる信号旗で発したとされる号令「皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ」が刻まれる(撮影:光石 達哉)

司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」のクライマックスでは、三笠を旗艦とする連合艦隊がロシアのバルチック艦隊を撃破する日本海海戦がダイナミックに描写されていて、興奮しながら読んだ覚えがある。三笠を見ると、その気持ちが呼び起こされる気がする。

 

三笠公園で見つけたサイクルスタンプラリーのチラシ。自転車メインで回るスタンプラリーは珍しいので、挑戦してみる(撮影:光石 達哉)

公園の管理事務所に、デジタルスタンプラリーのチラシが置いてあった。横浜市と横須賀市の各5カ所、計10カ所に設置してあるQRコードを読み取るとデジタルスタンプがゲットでき、抽選で賞品がもらえるという。せっかくなので、今回はこのスタンプラリーにも挑戦してみようと思う。

 

 ヤマトタケルの悲劇を伝える神社

ヤマトタケルと弟橘媛をまつる「走水神社」。もともと弟橘姫は別の神社にまつられていたが、その土地が軍用地になったため、ここに移されたという。境内の奥には、東郷平八郎や乃木希典が建てたという弟橘姫の歌碑もある
(撮影:光石 達哉)

三笠公園を出て海岸沿いに伸びる「よこすか海軍通り」を西へ走る。やや天気が悪いせいか、期待通り道も空いていて走りやすい。ちなみに島や半島を一周するときは時計回りがおススメ。車道が左側通行なので、自分の左側にすぐ海が見えるという場面が多いからだ。

 

弟橘媛の献身を称える「舵の碑」。公開の安全を願って建てられたという。神社には、弟橘媛が入水する姿を描いたお守りや絵馬もあった(撮影:光石 達哉)

丘の上にある走水神社からの景色。東京湾に浮かぶタンカーの先、房総半島がすぐ近くに見え、ヤマトタケルも簡単に渡れそうだと思ったのだろう。右奥の白い建物は防衛大学校走水海上訓練場で、訓練する学生の声がここまで聞こえてきた
(撮影:光石 達哉)

7kmほど走って、「走水神社」に立ち寄る。ここはヤマトタケルと弟橘媛(おとたちばなひめ)を御祭神とする神社。以前も紹介したが古事記・日本書紀の中に、東京湾を船で渡ろうとしたヤマトタケル一行が海が荒れて遭難しかけたとき、妻の弟橘媛が身を投げて海神の怒りを鎮めたという伝説がある。そのときヤマトタケルらが出航したのが、この走水の海。確かにここは東京湾が最も狭まっているポイントだが、走水の名の通り海流の流れが速いので、船で渡るのは容易ではないという。最近、日本神話がマイブームなのでここも訪れたかった神社だ。

 

 観音崎灯台 から たたら浜へ

三浦半島のほぼ東端にある「観音崎灯台」。灯台は岬の丘の上にあり、自転車に乗ったままでは近づけないので、遠くから眺める。今回は三浦半島の灯台もめぐっていく(撮影:光石 達哉)

走水から少し走ると「観音崎」という岬が見え、その上に灯台が立っている。今回、LAUMI(ラウミ)という三浦半島観光サイトを参考にして走っている。そのサイト自体は今年3月末で更新終了となり休止状態なのだが、その中のサイクリングページに埋め込まれているグーグルマイマップには三浦半島の灯台の位置がマーカーを打たれているので、今回は灯台めぐりもしていこうと思う。

いつの間にかやんでいた霧雨がまた降り出したかと思うと、すぐに本降りになってきた。灯台に近づくには、観音崎公園の敷地内に入らないといけないのだが、園内は自転車走行禁止で押し歩きになるので、遠くから眺めただけで先を急ぐ。


黒船のブロンズ像がかっこいい「たたら浜」のマイルストーン。ペリーが来航した浦賀はこのすぐ先で、当時はここからも黒船が見えたのだろう。サイクリストが三浦半島一周を楽しめるように、マイルストーンは全8カ所ある(撮影:光石 達哉)

各マイルストーンの近くにはサイクルステーションが整備され、サイクルスタンドが設置されている(撮影:光石 達哉)

運よく雨はすぐやんだので、自転車を走らせて観音崎を回り込むと、「たたら浜」という小さなビーチがある。そばに黒船のモニュメントがあり、その下に「自転車半島宣言」と書かれた銘板がついている。これは先ほど触れたLAUMIを運営していた三浦半島観光連絡協議会が設置したマイルストーンというサイクリスト向けの記念撮影用モニュメントで、三浦半島に全8カ所設置されているという。この黒船のように、地域の象徴的なものをモチーフにしたブロンズ像が造られていて、見ていても楽しい。ちなみにこのたたら浜は、ゴジラが映画第1作で上陸した浜としても有名だそうだ。

というわけで、今回はこのマイルストーンめぐり、灯台めぐり、そして最初に見つけたデジタルスタンプラリーの3つのミッション(?)をこなしながら、引き続き三浦半島を一周する。次回は、浦賀から先へ進んでいく。

(光石 達哉)

 

今回のルート:①ヴェルニー公園-②どぶ板通り―③三笠公園-④走水神社-⑤観音崎灯台-⑥たたら浜

 

 

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