自らの世界記録は自ら塗り替えるためにある。
1936年ベルリン五輪・競泳800メートル自由形リレーで、日本は32年ロス五輪で自らマークした世界新記録を7秒近く更新し、2大会連続の金メダルに輝いた。
ロス五輪でも金メダルを獲得したこの種目だが、2大会ともメンバーだったのは遊佐正憲のみ。杉浦重雄、田口正治、新井茂雄は世界トップクラスの実力を持つも、五輪は初出場であった。
個人種目での悔しさを胸に、リレーでのリベンジを誓った4人の底力が勝ち取ったこの金メダルは、競泳ニッポンのリレー競技、最後の金メダルとなっている。
金メダルの数だけ、超人たちのドラマがある。
2大会連続圧勝 世界記録も更新
4年前を彷ふつとさせる日本の独走状態だった。
36年ベルリン五輪競泳800メートル自由形リレー決勝。第1泳者の遊佐が飛び出し、続く第2泳者の杉浦も勢いに乗った。続く田口からアンカーの新井にバトンが渡った時点で追随する者はなく、最後は新井の独壇場だった。
大歓声の中、日本が米国に15メートル以上の大差を着け、8分51秒5でゴール。前回ロス五輪で、宮崎康二・遊佐・豊田久吉・横山隆志の4人がマークした8分58秒4の世界記録を、7秒近く縮める大記録を樹立した。
直前の100m自由形で金逃したリベンジ
驚異的なタイムの背景には、リベンジを果たすという4人の強い思いがあった。
36年ベルリン五輪100メートル自由形決勝。リレーに先立って行われたこの種目は、日本勢が優勝候補筆頭。表彰台を独占し、いざ800メートルリレーへという流れを描いていた人も少なくなかった。
しかし、終わってみると、無名のチックというハンガリーの選手が金メダル。0秒3の差で2位に遊佐、3位に新井、4位に田口と悔しさの残るレースとなったのだ。
そうして迎えた800メートルリレー、雪辱のチャンスに4人が奮起しないわけがなかった。
東京で85年ぶりのお家芸復活なるか
男子800メートル自由形リレーは、戦後も日本のお家芸として52年ヘルシンキ、60年ローマで銀、64年東京で銅、そして2016年リオ五輪で52年ぶりに銅メダルを獲得するも、金メダルには遠く及ばず。日本のリレー競技全体でも、金メダルは36年ベルリン大会が最後となっており、お家芸の復活が期待される。
(mimiyori編集部)