【パラリンピック】スゴイだけじゃない!ユーモア満載の金メダル候補~水泳・木村敬一①

 

木村敬一

パラ水泳の日本のエース・木村敬一(写真:mimiyori編集部)※2020年7月の公開練習時

パラリンピックにも、“日本のトビウオ”と評される選手がいる。

全盲クラスのパラ水泳選手、「世界のキムラ」こと木村敬一だ。

2008年北京パラリンピックから3大会連続で日本代表として参加し、合計6個のメダルを獲得した日本のエースだ。

16年リオでは50メートル自由形、100メートルバタフライで銀、100メートルは平泳ぎ、自由形で銅メダルを獲得。東京パラリンピックで悲願の金メダル獲得が期待されている。

すごい選手であることはもちろん、木村にはさらに「面白い」という形容詞もついてくる。 

選手の素顔を知れば、競技にも興味がわくパラアスリート連載、第1回は「ストイックなアスリートの素顔は にこやかな根っからの関西人⁉」木村敬一について。

 

 

 

 

 

 Twitterににじみ出るユーモア

まずは、あるツイッタラーさんについて最近の投稿を見ていこう。

2020年12月11日には

 

 

とつぶやき、同年9月30日には

 

とつぶやく。

さらに20年春の新型コロナウイルス感染拡大防止による自粛期間中には、なるべく楽しく練習に立ち向かう様子がアップされた。

 

 

何とも言えないノリと言葉で、日々の生活をユーモアたっぷりに発信してくれる。

 

このチャーミングな人柄があふれ出て止まないツイッタラーこそ、木村敬一なのだ。

思わず笑顔になってしまう投稿は、木村本人が音声ソフトを利用して書き込んでいるとか。

全盲であること(滋賀県出身であることも)をジョークに織り込みつつ、読者を不安にさせない絶妙なセンスが心地いい。  

 

「note」でさらに抱腹絶倒

 

 

 

さらに自粛中にやることがなくて始めたというのは、ソーシャルメディア・プラットフォーム「note」での発信だ。

18年から水泳の強豪国・米国に留学していた2年間の経験を赤裸々に、ツッコミ多めで語っている。

note.com

自由すぎるトレーナーTonyとのやりとりは抱腹絶倒。日本から木村に取材が来た時には、Tonyの方がノリノリで、ピンマイクで熱唱していたり、いつもよりトレーニングが多かったりしたとか。

留学中は、元メジャーリーガー・上原浩治氏の現地自宅にホームステイしたこともあったそう。

コロナ禍でアメリカから帰国するまでの心境の変化も、すべて記されている。

 

「書き物って楽しいな」という彼の文章には飾らない本音が記されていて、だからこそ健常者と障害者の垣根なんてスッと飛び越えて、読者も共感したり、笑ったり、ツッコんだりできる。  

 

ハンパない愛され力

木村敬一 富田宇宙

20年7月の合同公開練習でともに笑顔を見せる木村(左)と富田。長年にわたって仲が良い(撮影:mimiyori編集部)

その人柄はTwitter上だけでなく、実際にもチャーミング。

同じ視覚障がいクラスで、16年リオまで毎日一緒に練習していたパラ水泳・富田宇宙いわく、木村は「愛されすぎて恐ろしい男」だという。

競技に対してはストイックだが、普段は笑顔を絶やさず、相手を笑いで包み込む。

そんな彼の周りには自然と人が集まり、周囲の人にもっと支えたいと思わせてしまうのだ。

必殺“愛され力”の威力はハンパではなく、彼の持ち物の9割は周りの人からのプレゼントだという。

みんなが何でもしてあげたくなってしまい、ふと気がつくと引率から恋愛相談まで何かと面倒を見るマネージャー状態に陥るのだ。

当の本人は「いや、分かんないスけど、んー、みんな優しくしてくれます」。

愛され力を知りたい方は、ぜひ彼のTwitter、noteを一読することをお勧めする。ハマってしまい、一読では済まないはずだ。 

 

ブラインド界の挑戦「お化け屋敷」潜入

さらに、木村と富田は「暗闇で生活している視覚障がい者は、お化け屋敷の暗闇を怖いと感じるのか」を検証しようと、2人でお化け屋敷に潜入したことがある。

木村は事前に大見えを切ったという。

「僕はね、指鳴らしの反響で空間を把握して暗闇を進むことができるんだよ。ここは僕に任せて」

大人気漫画「ゴールデンカムイ」の登場人物ばりの能力をアピールし、頼もしげだった。

いざ中に入ると、展示物に突入したり、道なき道を行こうとしたり。最終的には当時、富田のわずかな視力で先導したのだそう。

 

いつもにこやかで、たくさんの人に囲まれて、メダルも獲得して。

しかし、彼は満足していない。

日本選手団最多の4個のメダルを獲得した16年リオパラリンピック、閉会式の真っただ中、ヒーローの姿は選手村の自室にあった。

15年世界選手権は2個獲得した金メダル、そして迎えたリオでも獲得できたはずの金メダルは、彼の手にはなかった。

(つづく=mimiyori編集部)

 

 

 

※これまで取材した内容を再編集して掲載。

 

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