ラグビー欧州6カ国対抗戦「6nations」の参加6カ国にフィジー、ジョージアが加わった8カ国対抗戦「オータム・ネーションズカップ」。最終節ウェールズーイタリアは、12月5日(現地時間)に行われる。
今回は、この2カ国について観戦前に知っておきたい5つのことをご紹介。
ウェールズは小さな島でプレーして飛躍した”ジャージー・ボーイズ”が注目を集めており、イタリアではウェールズ出身のSHステファン・ヴァーニーが話題となっている。
- ウェールズ:”ジャージー・ボーイズ”に注目
- ウェールズ:快速王 ジョシュ・アダムズがキーマン
- ウェールズ:イタリアと深い歴史あり
- イタリア:サモア系豪州出身のWTBイオアネが代表デビュー
- イタリア:ウェールズ出身のSHヴァ―ニ―出場
ウェールズ:”ジャージー・ボーイズ”に注目
20年秋6nations後に招集されたSHキーラン・ハーディー、SOカラム・シーディーは親友。さらに、サプライズ招集された“大巨人”LOウィル・ローランズと合わせ、このトリオにはある共通点がある。
小さなジャージー島のクラブでプレーした経験だ。
地元メディア「ウェールズ・オンライン」によると、ハーディーは10代の頃、スカ―レッツのアカデミー入りを熱望。練習するだけは許されたが、契約しての加入でもなければ、給与をもらうこともなかった。
出場機会を求めて19歳の時、イギリス海峡のフランス側に浮かぶジャージー島にある、クラブ「ジャージー・レッズ」へ移った。
島では、初めて実家から離れて生活した。チームメート4人で共同生活しながら、精神的にも成長した。
島で2年間を過ごした後、見違えるような選手になったという評判を聞きつけたスカ―レッツに復帰することになった。
今秋の代表入りで、島の人々から祝福の連絡を数多く受けたという。
ウェールズ:快速王 ジョシュ・アダムズがキーマン
かつて陸上競技短距離からラグビーに転向し、アイルランド代表入りまで果たしたナイジェル・ウォーカーが太鼓判を押した。
協会公式によると、快速王WTBジョシュ・アダムズについて「ここ2年ほど、世界最高のウイングだろうという話があがっている選手」と評価。欧州を代表する俊足、ジョニー・メイよりも上回るウイングだと説明した。
アダムズは20年2月のイタリア戦でハットトリックをマークしており、今回もキーマンになりそうだ。
ウェールズ:イタリアと深い歴史あり
ウェールズ、イタリア両国には長い歴史がある。
ウェールズ協会公式によると、ウェールズにはイタリアからの移民が多かったという。その大半はウェールズの南部に定住し、カフェやジェラート店などを始めた。
スポーツ界においても、ウェールズ、イタリア両国由来の選手が活躍してきた。
例えば、ボクシングのWBOスーパーミドル級王者だったジョー・カルザゲ、同クルーザー級王者だったエンゾ・マカリネリもイタリアの血を引いたウェールズ人だ。
イタリア系ウェールズ人の中で、ラグビー界における最も有名な選手は、05年6nations優勝時のLOロバート・シドリ。02~07年に42キャップ、2トライを挙げ、W杯は03年大会に出場している。
強烈キャラクターの猛者もいた。
90~94年9キャップのFLマーク・ペレゴも、イタリア系ウェールズ人。
彼は伝説のフィジカルを持っており、斧をかついで山の中を走り回ることで鍛えていたという。
斧は走り終わった後に、木を切るために持っていた。
当時のニックネームは「Oddball(変わり者)」。
英BBCの番組では「Mountain-man」と名付けられていた。
イタリア:サモア系豪州出身のWTBイオアネが代表デビュー
代表未出場のWTBモンティ・イオアネが最終節でデビューを果たす。
イオアネにみられるように、現代表には出身や由来が海外の選手が多い。例えばメイヤー、ステインは南ア出身。さらに今回は、ウェールズ出身のヴァ―ニーも起用する。
今回のメンバー23人のうち、1997年以降に生まれた選手が10人いる若い代表チーム。
AFPによると、19年W杯後に就任したフランコ・スミスHCは20年6月、イタリア代表について「新しいDNAをつくりたい」と抱負を語っており、着々とチーム再建を進めている。
イタリア:ウェールズ出身のSHヴァ―ニ―出場
母国と闘うことになった、ウェールズ出身のSHヴァーニーはイタリア人名「ロレンツォ」のミドルネームも持っている。
テレグラフ紙などによると、祖父母がイタリア人。
祖父は第二次世界大戦で軍属し、北アフリカで英国軍に捕らえられた。ウェールズへ連行され、捕虜収容キャンプへ。その後、多くの仲間たちとともに地元の農場で働き、戦後も定住することにしたという。
父アドリアンは90年代、ニースなどで人気を博したFL。今回、息子が試合前に直面するアンセムについて、地元メディア「ウェールズ・オンライン」によると「両方のアンセムを歌っても、私は驚かない。彼にとっては、感慨深い時間になるでしょう」とコメントしている。
通常開催であれば観客からブーイングを浴びる可能性があったが、本大会は新型コロナウイルス感染防止のため、無観客で行われている。
また、試合会場はウェールズのパーク・イ・スカ―レッツ。ヴァ―ニーにとっては母国開催でありながら、現在の立場としてはアウェーとなる。
ロイター通信によると、フランコ・スミス ヘッドコーチは母国戦に臨むヴァ―ニーについて「満員の(本来であれば代表戦が行われる規模の)ミレニアム・スタジアム開催じゃなくて、本当によかった」としている。
(mimiyori編集部)
※ウェールズーイタリア戦のもようは、WOWOWで12月5日(土)深夜1時30分~放送予定。