【経営哲学】スーパーホテルが成長したワケ④山本会長の社員教育とは

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21年1月9日オープンのスーパーホテル東京・赤羽駅南口、レディースルーム。女性用に開発された枕やマットレスでぐっすり。美容ブランド「ReFa」のアイテムも試すことができる

(写真:スーパーホテル報道資料より)

「宿泊するだけで、健康になれるホテルがあります。もしぐっすり眠れなかったら返金します」

と聞いたら、あなたは信じますか?

外国の新手の詐欺かと思いきや、実は日本生まれ日本育ちのビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」のこと。

「安全・清潔・ぐっすり眠れる」をコンセプトに、1泊5000円からという低価格帯&オリジナル寝具で全国展開し、業界屈指の高稼働率・リピーター率を誇る。

J.D.パワー・ホテル宿泊客満足度調査の「1泊9000円未満部門」では、2019年までに6年連続第1位を受賞し、競合必至の分野で話題となっている。

価格だけでなく、環境と健康に配慮したビジネスモデル「ロハス」や、二酸化炭素を出さないエコプラン「エコ泊」、オーガニックなアメニティなどSDGsへの取り組みも積極的に行う。

そんな”人に・環境に優しい”サービスの原点には、二度も社員から見切られた創業者・山本梁介会長の“先見の明”があった。

第4回は山本会長の社員教育について。

 

 

 

 

 

利益は莫大も 社員と一つになれず2度目の挫折

バブル崩壊の壁を乗り越え、経営者として一段と磨きがかかった山本氏は休む間もなく、今度はホテル経営に転じ、宿泊に特化した戦略で全国展開を実現した。

家業で社員の心が離れた反省から、当初は「思いを共有するために経営理念を浸透させよう」と考えていた。

 

記念すべき、第1号店は激戦区の福岡県博多市に出店。

当時から「安全・清潔・ぐっすり眠れる」をコンセプトに、1泊4980円のサービスを提供していた。

 

しかし、大通りから脇道に入ったところにある立地、PR不足などで当初は稼働率が低迷。

半年を経過したあたりでようやく稼働率が合格ラインといわれる78%まで上昇し、30店舗ほどの展開が出来るまでになったが、稼働率80%になったあたりで頭打ちに。

さらに、お客さんからのクレームも増えるという決して成功とは言えない状況に陥っていた。

多額の資金を動かし、一度の取引で大きな利益を上げるうちに、経営理念の浸透や社員教育がいつしかないがしろになってしまっていたのだ。 

 

リッツカールトンが獲った賞を獲る 

 

 

 

そこで2005年に打ち出した方針が、お客様を大切にしている企業に送られる賞「日本経営品質賞」を目指し、社員教育に力を注ぐことだった。

当時、日本では21社が既に受賞していたが、関西ではパナソニックだけ。

「米国でリッツ・カールトンが受賞しているなら、日本ではスーパーホテルが取ろう」と決意した。

 

20項目にもおよぶ審査項目をクリアすべく、毎朝の朝礼で話をし、現場を叱咤激励した。

しかし、山本氏が焦れば焦るほど、賞を獲得できるような状況からは遠のいたという。

このままでは家業の二の舞に…

 

だが、一皮むけた山本氏は今までとは違った。

原因をトップダウン方式に見出し、山本氏は「とにかく部下の言うことを聞いてみる」というボトムアップ方式に転換することを決めたのだ。

 

そうして08年に関西経営品質イノベーション賞を受賞し、翌09年に念願の日本経営品質賞を受賞した。

 

この経験から、スーパーホテルは毎日の朝礼を充実させるなど、社員一人ひとりを見つめ、自律的な成長を促す仕組みを導入した。

結果、2015年の2回目の日本経営品質賞受賞につながった。 

 

ホテル業界のエコ・ファースト企業へ 

 

 

 

その間リーマンショックも起きたが、バブル崩壊後のような緊急事態には陥らず、むしろ都市部の客室稼働率は3~5%上昇したのだった。

理由は顧客の7割がリピーターであり、その頻度は減少したが、新規参入のビジネスマンが経費削減に伴い増加したからだとか。

その頃から、省エネと顧客満足度の両方を満たすために、環境と健康に配慮したビジネス・モデル「ロハス」をアピールポイントとするようになった。

 

 

 

(つづく=五島由紀子 mimiyori編集部)

 

※これまで番組などで直接取材した経営者のかたの哲学についてまとめたコラムです。

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