【経営哲学】スーパーホテルが成長したワケ⑤安くて高品質は両立できる

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1月9日オープンの「スーパーホテル東京・赤羽駅南口」にもある客室の大型テレビ・シアタールームは、巣ごもりにびったり

(写真:スーパーホテル報道資料より)

「宿泊するだけで、健康になれるホテルがあります。もしぐっすり眠れなかったら返金します」

と聞いたら、あなたは信じますか?

外国の新手の詐欺かと思いきや、実は日本生まれ日本育ちのビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」のこと。

「安全・清潔・ぐっすり眠れる」をコンセプトに、1泊5000円からという低価格帯&オリジナル寝具で全国展開し、業界屈指の高稼働率・リピーター率を誇る。

J.D.パワー・ホテル宿泊客満足度調査の「1泊9000円未満部門」では、2019年までに6年連続第1位を受賞し、競合必至の分野で話題となっている。

価格だけでなく、環境と健康に配慮したビジネスモデル「ロハス」や、二酸化炭素を出さないエコプラン「エコ泊」、オーガニックなアメニティなどSDGsへの取り組みも積極的に行う。

そんな”人に・環境に優しい”サービスの原点には、二度も社員から見切られた創業者・山本梁介会長の“先見の明”があった。

最終回の第5回は、スーパーホテルが示した「廉価」と「高品質」の両立について。

 

 

 

 

 

宿泊すなわちCo2削減の「エコ泊」

2009年にスーパーホテルが導入した「ロハス」は、地球の環境を考え、人の健康を考え、それを応援する新しいホテルの形だ。

ロハスの代表的なサービスは、始まった二酸化酸素を出さないエコプラン「ECO泊」だ。

もともと他ビジネスホテルよりも、1室当たりの二酸化炭素排出量が約26%少ないという心がけをしてきたが、さらに2014年からの「エコ泊」では二酸化炭素排出量ゼロで泊まることができるというプランになっている。

その仕組みは、利用者が宿泊時に発生させた二酸化炭素排出量の100%をスーパーホテルがカーボン・オフセットによって相殺するというもの。

※カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動で排出された二酸化炭素などの温室効果ガスについて、削減努力をしてもどうしても削減できない分を植林・森林保護・自然エネルギー事業などで埋め合わせすること。

 

2008年からは、エコに協力してくれたお客さんには、特典を付ける「エコひいき」というサービスも用意している。

ベッドリネンの洗濯に使う1室あたり約7ℓ以上の水を削減するべく、連泊する場合に部屋の掃除不要の申し出をしてくれたお客さんにはミネラルウオーターをプレゼント。

オリジナルミネラルウオーター「力水」はモンドセレクション金賞を受賞したそう。

また箸や歯ブラシを持参した人には、健康によいお菓子をプレゼントしているとか。 

 

Natural Organic Smartな取り組みで「ホテルを超えるホテル」へ

 

 

 

客室は、珪藻土やLED照明、個別式エアコンやリサイクルカーペットなど環境を考慮した設計にこだわっており、ロビーにも空気清浄や湿度調節、消臭や吸音効果がある天然のコケが配置されている。

さらに客室のボトルアメニティや、スキンケア・ヘアケア製品はオーガニックのものを厳選し、一部店舗ではオーガニックコットンタオルも導入している。

ロビーなど共用部分に設置しているアロマディフューザーにも、岐阜県東白川村で採れた100%オーガニックのヒノキオイルを使用。

朝食でも、オーガニック野菜や有機食材にこだわるのはもちろん、ペットボトルから生まれたリサイクル食器を使用したり、「バイオ生ゴミ処理機」により朝食の生ゴミを堆肥化して近隣の農園に提供するなどの取り組みも行っている。

化学肥料や農薬をできるだけ使わずに育てられたオーガニック製品は、環境負荷を減らすことができるだけでなく、私たちの安全や健康増進にもつながる。

まさに“自然も身体も大切にする”気持ちのいい宿泊を隅々まで体感できるのだ。

 

 

”ぐっすり研究所”でオリジナルのベッド&枕開発

そしてもう一つのスーパーホテルの代名詞が「ぐっすり眠る」だろう。

ホテルに泊まると枕が合わない、冷蔵庫の「ジーッ」という音が気になって寝た気がしないという人もいるだろう。

ならば1度スーパーホテルに泊まってみてほしい。

科学的な知見に基づいて大学と共同で開発した8種類の“快眠枕”、設計の段階から徹底した防音、静音タイプの冷蔵庫、ぐっすりパジャマ、健康イオンスリッパなど、ここまでやるかというほど、眠りへのこだわりが体感できる。

 

それでもぐっすり眠れなかったというお客さんには返金サービスもある。

当初は毎月200万円以上返金していたが、2013年には返金が全体の約0.00013%にとどまり、満足度の高さがうかがえる。 

 

廉価と高品質は相反しない 

 

 

 

 “高品質”な宿泊サービスを“低価格”で提供すべく、ビジネス・モデル特許を取得した「自動チェックイン・チェックアウト・システム」や、早々に個室から電話を無くすなど、人件費の削減やサービス品質の向のために試行錯誤した姿勢が、結果コロナにも迅速に対応できる基盤を作ったのだろう。

 

今やスーパーホテルグループは、ホテル事業だけでなく、介護事業、マンション管理業、人材派遣業、介護資格の専門学校、病院、薬局、太陽光発電所などの経営にも携わるようになった。 

 “廉価”と“高品質”という言葉は相反するものではないと、スーパーホテルが証明してくれた。

そこに押し付けがましいボンボンの姿はもうない。

社員と共に工夫し続けるホテル業界の先駆者の笑顔があった。

 (おわり=五島由紀子 mimiyori編集部)

※これまで番組などで直接取材した経営者のかたの哲学についてまとめたコラムです。

新型コロナウイルス感染拡大による影響と闘う各業界の方々へエールを。

 

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