自転車初心者の編集部見習いコイケとともに、サイクリングをより楽しむためのノウハウやアイテムを学んでいくシリーズ。今回は輪行で出かけた茨城県で、国内第2位の大きさの湖、霞ヶ浦一周にチャレンジ!
自転車乗り ウェルカム過ぎる土浦駅
前回まで紹介したようにコイケにとって初めての輪行で、東京駅から快速電車に1時間ちょっと乗って茨城県の土浦駅に到着した。
駅に着くとホームのあちこちに自転車のイラストが描かれていて、改札の上にも「ようこそ“サイクリングのまち 土浦へ”」の横断幕がかかっている。かなり自転車乗りを歓迎しているようだ。
これは見せかけだけではなく、改札を出て左に行くと輪行した自転車を組み立てたり、収納したりする作業スペースがある。輪行作業は邪魔にならないところを探してコソコソやるのが普通なので、正直これはありがたい。
さらにコイケが事前に調べていたのだが、改札右側の駅ビルには「りんりんスクエア土浦」という全国初の駅直結サイクリング拠点施設がある。エレベーターで降りた地下1階には輪行作業できるスペースとともに、コインロッカー、シャワールーム、更衣室、レンタサイクルがある。1階には自転車ショップ、サイクルカフェがあり、さらになんと3~5階には星野リゾートが運営するサイクリングホテルまである。
なぜここまで自転車に手厚いのかいうと、今回走る「つくば霞ヶ浦りんりんロード」というサイクリングロードが2019年に国土交通省の「ナショナルサイクルルート」の第1弾として指定されたことなどを契機に、茨城県がサイクルツーリズムの推進による地域の活性化を目指し、拠点施設の整備を進めているからのようだ。
ちなみに「ナショナルサイクルルート」は現在、全国に6カ所あり、他に「太平洋岸自転車道(全長1,487km)」、「しまなみ海道サイクリングロード(全長70km)」などがラインナップされている。
土浦駅前から「つくば霞ヶ浦りんりんロード」へ
さて前置きが長くなったが、自転車を組み立てて地下1階からスロープで土浦駅前に出て、いよいよサイクリングに出発だ。
「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、公式サイトによると全部合わせて約180kmあり、筑波山方面と霞ヶ浦方面に分かれている。さらに今回僕らが走ろうとしている霞ヶ浦方面は「霞ヶ浦1周コース(約130km)」、「霞ヶ浦1周ショートコース(約90km)」、「かすみがうらライドクエストコース(約41km)」の3つに分かれていて、体力やスケジュールに合わせて好きなコースを選べる。
問答無用で130kmの1周コースを行くのかなと思ったが、最近コイケは大学の探検部の練習(2リットルのペットボトルを10本ぐらい背負って階段を上り下りしているらしい…)でお疲れのようで、90kmのショートコースを走ることに。終盤の霞ヶ浦大橋までは同じコースを走ることになっている。
駅前から数100m走って、霞ヶ浦に注ぎ込む桜川沿いに出ると、サイクリングロードの看板がすぐ見つかり、道路上の矢羽根と呼ばれる標識に沿うことで迷うことなく走れるようになっている。この標識はサイクリングロード全体に渡って続いており、舗装もきれいで走りやすい。すぐに霞ヶ浦が目の前に広がり、生憎の曇り空だが「広い―!」とコイケも感激している。
3kmほど走ると湖畔に大きなオランダ型風車が見えてきた。霞ヶ浦総合公園のシンボルで、高さ25mあり、展望台になっている。ちなみに風車は電動で回転するようだが、このときは止まっていた。園内はチューリップなど季節の花も楽しめるようだが、この日は咲いている花は少なかった。
零戦の実物大模型を横目に進む
さらにスタートから約6km地点、零戦が見えてきた。ここは「予科練飛行記念館」という施設で、戦時中は予科練教育を専門に行う土浦海軍航空隊があったという。予科練(海軍飛行予科練習生)として養成された少年パイロットの戦死者は約1万9000人に上るそうで、そのうち特攻隊として出撃したものも少なくないという。
展示されている零戦は2015年に作られた実物大レプリカで、太平洋戦争初期に活躍し世界一の戦闘機として連合国軍に恐れられた21型がモデルになっている。
6月14日閉店で幻の大福に
ここからは、しばらくサイクリングロードに沿って東を目指す。サイクリングロードと言っても自転車専用じゃなく、車も通れる道で多くの釣り人が路肩に車をとめて釣り糸を垂らしている。「人生で一番多くの釣り人とすれ違った」とコイケも妙な感心をしている。東京や埼玉など県外ナンバーの車も多く、サイクリストより釣り人の誘致に力を入れた方がいいんじゃないかと余計なことまで考えてしまう。
左手の霞ヶ浦に目を向けると、ウインドサーフィンや水上バイクなどのマリンスポーツを楽しんでいる人もちらちら見かける。ただし、お世辞にも水はきれいとは言えず、コイケによると「湖の約10倍の面積から川の水が流れ込んできているようで、汚れた水が集合するみたいです」とのことだ。
この日の空は厚い雲に覆われた、ぬぺっとしたグレーで、さらに左が湖、右が田んぼと景色が変わり映えせず、さらにさらに道が平たんなのはいいけど、あまりにも平たん過ぎてなんの変化もないので、ちょっと退屈だなーと思いながらペダルを回していく。
コイケが小腹が空いてきたと訴えてきたので、サイクリングロードをちょっとだけ離れて約31km地点にある「鴻野菓子店」に立ち寄る。明治時代に創業した老舗だそうで、名物の大福で腹ごしらえ。実はこのお店、後継者不足で今年6月末で閉店する予定だったのだが、設備の故障で6月14日に閉店が早まり、もはや営業していないそうだ。というわけで、僕らが食べた大福は幻の味になってしまった…
名残り惜しさを感じつつも、続きは後編へ。
(光石 達哉)