読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
今回は、ちょっと久しぶりにというか、またまた自転車でデジタルスタンプラリーに挑戦。訪れたのはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台のひとつである伊豆だ。
前編は三嶋大社など北伊豆のスポットをめぐった。
13のスタンプ制覇へ~いざ出立!
ドラマのタイトルは鎌倉だが、今回は源頼朝の旗揚げの地で北条氏の本拠地でもある伊豆エリアを走る。
伊豆箱根鉄道と沿線の自治体が主催する「北条氏・源氏ゆかり13の地を巡るデジタルスタンプラリー」が2月末まで開催されていて、三島から修善寺までを結ぶ伊豆箱根鉄道・駿豆線沿いにドラマにちなんで13のデジタルスタンプが設置されているという。
正直、ドラマはちょっとしか見たことないのだけど、平家物語や源平合戦は昔から興味があるし、伊豆エリアを自転車で走るのも初めてなので楽しみだ。
まだまだ寒い2月下旬のある日、函南(かんなみ)町の「道の駅・伊豆ゲートウェイ函南」から出発。天気はよくて富士山も遠くにはっきり見えるし、サイクリストの姿も多い。
打倒平家&鎌倉幕府成立 はじまりの地を探訪
まずは道の駅を出て伊豆縦貫道という大きな道をしばらく進み、途中で右折して県道141号を西へ。
次第に上り坂になり、スタートから約8.5km、標高150mほどの小高い山の中にある「高源寺」が最初の目的地だ。
石畳の参道の先に山門があり、くぐると大きな本堂があった。
ここは伊豆に流されていた頼朝が源氏再興の密議をし、さらに石橋山の戦いの旗揚げのときに武運長久の祈願をしたという。まさに打倒平家、鎌倉幕府設立のスタートの地とも言える場所だ。
今回のスタンプラリーは、各スポットに掲示されているQRコードをスマホカメラで読み取って、集めていくというもの。
本堂の右斜め前に小さな蔵のような建物があり、その裏手にQRコードが貼られていた。その横に別のデジタルスタンプラリーのQRコードもあったので、そちらもエントリーしてみる。
伊豆周辺では同時期にいろいろなスタンプラリーが行われているようなので、興味ある人は自分の時間や移動手段に合ったものに挑戦してみるのもいいだろう。
さて、参道の前で道が二股に分かれていて、次のスポットへは右の上り坂が2kmほど近道のようなので入ってみたが、とんでもない激坂だった。
痛めた手首などまだまだ体調が万全ではないので、ここはおとなしく引き返す。
来た道を戻って右折し、約4.5kmで「かんなみ仏の里美術館」に到着。
残念ながらコロナ禍で3月6日まで休館中だったが、入口のガラス戸にQRコードが貼ってあった。
ここには北条義時の兄・宗時が戦死した後、慰霊のために造られたという「阿弥陀三尊像」が収蔵されているそうだ。
鎌倉殿が「百日祈願」した三嶋大社へ
ここからは西へ向かい、三島市を目指す。
三島は新幹線の駅もあり、伊豆半島の入り口でもある大きな町だ。さっきまで晴れていた空は薄い雲に覆われ、体にあたる風がより冷たく感じた。富士山も雲の向こうに隠れてしまったようだ。
約8km走り、次のスポットは旧下田街道からちょっと入った住宅街の中にある「間眠(まどろみ)神社」。
小さな神社だが、挙兵を決意した頼朝が三嶋大社に百日祈願をする途中、路傍の祠の松の下で仮眠をとったことが名前の由来となったという。
続いて北へ約1km。
次第に参道のような景色になってきて、大きな石の鳥居が見えてきた。「三嶋大社」だ。
先ほども触れたように、頼朝が源氏再興の百日祈願をしたとされる伊豆国一宮(その国で第一番に格付けされた神社)だ。
頼朝と妻・北条政子が休憩に使ったと言われる腰掛石や、「鎌倉殿の13人」の1人である安達藤九郎盛長が頼朝を警護する際に控えた場所とされる相生(あいおい)の松などがある。
ご褒美の手ぬぐいゲット!
次は約700m西へ進み、伊豆箱根鉄道・駿豆線の「三島広小路駅」へ。
三嶋大社からここまでの道は、毎年8月15日~17日の3日間開催される三嶋大祭りでは歩行者天国となり、16日には「頼朝公旗挙げ行列」が行われる。毎年、芸能人が頼朝に扮し、市民も当時の格好をして行列するそうだ。
さて、ここまで集めたデジタルスタンプは5個。
13個中5個のスタンプを集めると駿豆線の駅4カ所いずれかで景品と交換でき、景品は駅によって異なる5種類がある。ということで、ここ三島広小路駅で駅員さんに声をかけて、三嶋柄手ぬぐいをゲットした。
ここから再び函南町へ。
本来ならスタート直後に寄った方が効率はよかったが、スタンプラリーのサイトの地図がちょっと見るのが難しくて見落としていたところへ向かう。
約8km南下し、静かな田園風景の中にたたずむ「六萬部寺」に到着した。
本堂の前に、経塚と呼ばれる人工の小山がある。
頼朝は14歳で伊豆・蛭ヶ小島に流されてから、父祖の冥福と源氏の再興を祈念し、法華経を読経して日々を過ごしたという。
34歳のときに6万部読経したことを祝って、この経塚に法華経の経典と6万部読経した記録を埋め、それが寺の名前の由来にもなっているということだ。
この経塚は、もとは円墳だったものを利用したと言われている。百日祈願や六萬部読経を達成したりと、頼朝はかなり辛抱強い性格だったのだろうか。
というわけで、前編はここまでの6スポット。
後編は伊豆の国市、伊豆市にあるスポットをめぐり、スタンプコンプリートを目指す。
(光石 達哉)