読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
今回は神奈川県の三浦半島をサイクリングで一周。ルート沿いにある灯台やサイクリングのモニュメント、秋の花をめぐりつつ、デジタルスタンプラリーにも挑戦。第3回は三浦市に入り、劒埼灯台から城ヶ島へと走っていく。
東京湾の入り口、剱埼灯台へ
マイルストーンと呼ばれるサイクリングのモニュメントが置かれていた「北下浦海岸通り」(県道212号)を西へ進み、野比の交差点を左折して国道134号を南西へ。スタートからずっと横須賀市内を走ってきたが、ようやく三浦市に入り、左手に三浦海岸が広がる。
この日は天気予報でも南風と言っていた通り、潮の香りを感じながら向かい風の中を走っていく。羽田周辺は海のそばでも多摩川などの水が混じるからか、あまり潮の香りを感じないけど、このあたりは磯の空気をビンビンに感じる。途中から県道215号にそれて、さらに南下。ここまで来ると交通量もだいぶ減ってくる。
さらに途中で左折して、アップダウンの続く細い道へ。最後は細くて急な石畳の坂が現れ、雨で濡れていたので滑らないように片足つきながら進む。
今回は灯台めぐりもテーマのひとつだが、先ほどのマイルストーンから約10kmで劒埼(つるぎさき)灯台に到着した。ここは1871年(明治4年)に設置された灯台で、千葉県館山市の洲崎(すざき)灯台とともに、東京湾の入り口を示す重要な役割を担っている。
ちなみに劒埼の名前の由来は、江戸時代にこの辺りで船が難破したときに、神主が剣を海に投じて竜神の怒りを鎮めたからだそうだ。
風車が目印の宮川公園へ
県道215号に戻り、今度は西へ。丘陵地帯を進んで劒埼灯台から約5km、風力発電の風車が2基見えてくる。次の目的地はこの風車がある「宮川公園」で、ここに3つ目のマイルストーン「マグロと大根」がある。
三浦市の名産である三崎のマグロと三浦大根をくっつけているのだが、その強引さがほほえましい。
三浦半島南端の城ヶ島に上陸
宮川公園を出て、三浦半島の南端に浮かぶ城ヶ島方面へ向かう。途中、しばらくやんでいた雨が、またポツポツと降り始めてきた。城ヶ島大橋を渡り、まずは島の東側にある城ヶ島公園へ。
サイクルスタンドに自転車をとめ、公園内に入ろうとしたところで急に雨が土砂降りになった。運よく公園の入り口に屋根付きのスペースがあったので、雨宿り。他の観光客とともに、結婚式の前撮りをしていたと見られるカップルも慌ててそこに避難してきた。
幸い10~15分ほどで雨は上がり雲もすっかり通り過ぎて、まるで別の日になったかのような青空が広がった。これなら前撮りもいい写真が撮れるだろう。
この公園内には「安房埼(あわさき)灯台」がある。この灯台は、以前は島の東端の岩場にあったが老朽化のため廃止となり、2020年3月に公園内の高台に新たな灯台が造られた。園内は自転車は入れず、灯台までは数100mあるので途中の展望台から眺めることに。この展望台からは先ほど訪れた宮川公園の風車のほか、南方にはうっすらと伊豆大島も見える。
漁港で海鮮丼をいただく
今度は島の西側へ。こちら側には漁港があって、奥まで行くと海産物を扱った飲食店やお土産物屋が並んでいる。狭い路地もあるので、自転車を押しながら進んでいく。
こちらも高台の上に「城ヶ島灯台」が立っているのだが、階段を上るのをまたも横着して下から眺めるのみに。この城ヶ島灯台は、横須賀駅前のヴェルニー公園の由来となったフランス人技師ヴェルニーが設計し、1870年(明治3年)に完成したそうだ。現在の灯台は、1925年(大正14年)に再建されたものだという。
時刻は午後1時半。観光客は多いけど混雑というほどではないので、海が見えるお店に入って、鮪釜揚げしらす丼を注文。三崎のマグロと相模湾のしらすという最強コラボをいただく。特に釜揚げシラスは身がフワフワで、漁港の近くならではの味なのかもしれない。
今回はここまで。次回は三浦半島の西岸を走り、半島一周コンプリートを目指す。
(光石 達哉)