読んでいるうちに行ったつもりになれるかもしれない、プチ旅行の紀行文コラム「行ったつもりシリーズ」。
前回、三浦半島を一周しているときに見つけて参加したデジタルスタンプラリー。残り5つのスタンプをゲットすべく、横浜市内の英国ゆかりの地をめぐった。
鎌倉時代に建立~幕末に英領事館の「お寺」とは?
今回挑戦するデジタルスタンプラリーは、三笠公園でたまたまポスターを見つけた「ひつじのショーンが案内する横浜横須賀めぐりサイクルスタンプラリー Vol.3」。
スポットは横浜市内に5カ所、横須賀市内に5カ所の計10カ所あり、それぞれ英国にゆかりのある施設をめぐるというのがテーマだ。横須賀エリアの5つは前回すべて集めたので、今回は横浜エリアをクリアしに行く。
自転車で回ることを前提にしたスタンプラリーなので、ほどよい距離を走りながら観光も楽しめるのもありがたい。
まずは自宅から出発して約25km、最初のスポットは東神奈川駅近くの「妙湖山浄瀧寺」。お寺の前の掲示板に貼りだされていたQRコードを読み込んで、デジタルスタンプをゲットする。
ここは1260年に建立された日蓮宗の寺院だが、幕末の開港時には英領事館として使われていたという。門前にはそれを伝える石碑もある。ここには僕のほかにも、スタンプを集めているサイクリストのおじさんが来ていた。
次は3kmほど南に走って、JR桜木町駅の観光案内所へ。デジタルスタンプのスポットではないが、先着参加賞がもらえるという。
スタンプを3個集めた先着2000名に権利があり、僕はここまで6個集めているので、賞品のひつじのショーンの反射素材キーホルダーをゲットした。
詳しく知らなかったけれど、ひつじのショーンは結構有名なキャラクターのようだ。ここにも先着のサイクリストがいて、どこを回ってきたんですかと軽く情報交換をする。
「君が代」誕生の地? 〝幻の国歌〟作曲は英国人
さらに南に向かい、横浜スタジアムや中華街、元町通りを横目に3kmほど走る。2つめのスポットは、「本牧山妙香寺」。QRコードは道沿いの掲示板にあったが、お寺は丘の上にあるので、短い激坂を上る。
ここは「日本吹奏楽発祥の地」とされる。1869(明治2)年、妙香寺に寄宿していた薩摩藩の洋楽伝習生に、英国陸軍の軍楽隊長ジョン・ウィリアム・フェントンが吹奏楽の指導をしたことが、その始まりだそうだ。
また、ここは「国歌君が代発祥の地」で、フェントンは「君が代」の“最初”の作曲者でもあるそうだ。
フェントンが日本にも国歌が必要だと訴えたところ、薩摩藩士の大山巌(のちの陸軍元帥)らが、古今和歌集の中にある詠み人知らずの和歌がもとで薩摩琵琶などでも歌われていた「君が代」を歌詞に勧めた。これにフェントンが曲をつけて明治3年に初披露されたが、欧州風の曲調で日本人には歌いにくかったため、明治9年に廃止になった。
その後、宮内省の雅楽奏者の奥好義、林広守らが新たに作曲し、ドイツ人のフランツ・エッケルトが吹奏楽用に編曲したのが現在の「君が代」ということだそうだ。
ナンノ博物館?…「馬」です
妙香寺を下り、JR山手駅の西側へ。このあたりの丘の地形は階段や行き止まりが多く、何度か引き返しながら坂を上り、約3km走って根岸森林公園へ。この公園の一角にある「馬の博物館」が次のスポットだ。
根岸森林公園は、江戸時代末期に英駐屯軍将校らの設計・監督のもとで作られた日本初の本格競馬場「根岸競馬場」の跡地。今でも公園を見下ろすと楕円形のコースの名残りを感じられる。
「馬の博物館」は、その歴史を伝える競馬や馬の文化に関する資料が展示されている。
公園の西側へ向かい、一部自転車で走れないエリアもあるので押し歩いていくと、「旧根岸競馬場一等馬見所」がある。いわゆる当時の観客席、グランドスタンドだ。
今あるのは関東大震災後の1930年(昭和5)年に再建されたもので、エレベーターも設置されていたという立派な建造物だ。
しかし、太平洋戦争中の1942年(昭和17)に競馬開催が休止して以降は使われることなく、2009年(平成20)には経済産業省により近代化産業遺産に認定された。
丘を下り、さらに西へ約3km進み、次のスポット「横浜市電保存館」に到着。横浜では1904年(明治37)年から1972年(昭和47)年まで約70年間にわたって市電、いわゆる路面電車が走っていたという。
この保存館には7両の市電車両は保存されているほか、市電シミュレーターや鉄道ジオラマがあるという。
ラストスタンプは 野口英世ゆかりの検査室へ
最後は南へ約10km走り、「横浜市長浜ホール/旧細菌検査室」へ。
このあたりは明治28 (1895)年に長浜検疫所が設置され、海外からコレラなどの伝染病が国内に入るのを防いでいたそうで、現在は長浜野口記念公園となっている。
旧細菌検査室とは、千円札の肖像でおなじみの野口英世がかつて検疫業務を行い、ペスト菌を検出した施設。野口英世ゆかりの研究施設としては、日本に現存する唯一の建物だそうだ。
というわけで約25km走って、横浜エリア5個のデジタルスタンプをクリア。英国ゆかりの場所というテーマだったからか、シブい場所が多かった分、新たな発見も多かった。これで横須賀エリアと合わせて10個のスタンプをコンプリート。
集めたスタンプの個数によって、ひつじのショーンのサイクルジャージ(スタンプ10個)、ホテル宿泊券(同7個)、横浜、横須賀観光名所の招待券(同5個)などが当たる抽選に応募できる。スタンプラリーは、12月15日(木)まで開催されているので、気になる方は挑戦してみては。
(光石 達哉)