【北京パラリンピック】メダル数で大躍進した国は?/ウクライナ選手の奮闘も 今大会で覚えておくべき海外トップ選手~大会総括編

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北京パラリンピックの閉会式。雪の結晶をモチーフにした聖火台の下に各国の旗手らが集まった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)


3月13日に閉幕した北京パラリンピック。今大会は46カ国の国と地域が参加し、6競技78種目で熱戦が繰り広げられた。

 

メダル獲得数では、上位2カ国が大躍進。開催国の中国は、前回18年平昌大会の車いすカーリングで獲得したメダル1個から国別最多となる61個。ロシアによる侵攻で出場が危ぶまれたウクライナは、同国冬季大会最多となる29個のメダルを獲得した。

ほかにも、きょうだい全員がメダリスト、日本とのつながりもある選手の大記録など、今大会も多くの名場面が誕生した。4年後のパラリンピックまで覚えておきたい海外選手の活躍を紹介する。

 

 

中国:全競技でメダル獲得 大躍進の背景とは?

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車いすカーリングは連覇。アイスホッケーは初めてメダルを手にした(IPC公式より)

 

自国開催で他国を圧倒した。18年平昌大会では車いすカーリングの金メダルのみに終わった中国が、今大会は全6競技でメダルを獲得。金メダル18個を含む61個は、国別最多で2位ウクライナの倍以上だった。

団体競技は車いすカーリングの連覇に、アイスホッケーは銅で初のメダル獲得。個人競技はアルペンスキー19個、クロスカントリースキー18個、バイアスロン12個、スノーボード10個。過去にメダル0個だったことが信じられないほどの躍進を見せた。

 

金3個を含む19個のメダルを獲得したアルペンスキーは、平昌大会後にイタリア人コーチのダリオ・カッペーリ氏がヘッドコーチに就任。かつてはイタリアのパラ代表コーチとして、母国選手の金メダル獲得にも携わった人物だ。今大会の本番会場をはじめ国内での4年間のトレーニングは、コロナ禍で経験の少なかった海外選手を上回る大きな経験になったとみられる。

強化拠点の整備も躍進の大きな要因となった。21年3月には、中国初の冬季パラスポーツに特化した施設「国家障がい者冬季スポーツトレーニングセンター」の使用が始まった。カーリング場、アイスホッケー場のほか、合宿ができる宿泊施設など設備も充実している。

 

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金メダリストの中には、バイアスロン女子立位の郭雨潔(LW8)が17歳、アルペンスキー男子立位の梁景怡(LW9-1)が19歳と若手も多い。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ大会でも、中国勢の活躍が続くかもしれない。

 

ウクライナ:メダリストの自宅に攻撃/19歳女子選手の父が捕虜

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表彰台を独占したバイアスロン男子視覚障がいのウクライナ選手ら(IPC公式より)

 

母国にいる家族を案じながら大会に臨んでいた。ウクライナ勢で表彰台を独占したバイアスロン男子視覚障がい。スプリント、ミドルの2種目で銅メダルに輝いたドミトロ・スヤルコ(B2)は、自宅マンションが爆撃の被害を受けたという。

また、バイアスロン女子座位の19歳アナスタシア・ラレティナ(LW10.5)は、父がロシア軍の捕虜になったと伝えられている。2種目に出場したが、最初に出場予定だったミドル種目は欠場していた。

 

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14年ソチ大会開会式。ウクライナは旗手1人のみ入場(ウクライナ入場は動画1:00:10あたり、IPC公式より)

 

14年ソチ大会では、直前にロシアがクリミアへ侵攻。当時、ウクライナは抗議の意を示すために31選手のうち30選手が開会式出席をボイコットし、旗手のみが参加した。大会のボイコットまでは至らなかった。

今大会は直前にロシアによる侵攻があったものの、参加を決断。冬季大会ではウクライナとして最多29個のメダルを獲得した。競技別ではバイアスロン21個、クロスカントリースキー7個。クロスカントリースキーのオープンリレーで金メダルを獲得するなど、大会全体を通じて選手同士の団結の強さが見られた。

 

オーストリア:アイグナー4きょうだい 全員がメダリスト

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出場全5種目でメダルを獲得したヨハネス・アイグナー(左、IPC公式より)

 

5人きょうだいのうち4人がオーストリア代表だったアイグナーきょうだい。アルペンスキーの視覚障がい部門に出場した全員がメダルを獲得した。

16歳の長男ヨハネス(B2)は全5種目で表彰台。金メダルは滑降と大回転。回転、スーパー複合で銀、スーパー大回転は銅だった。

 

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初出場で金メダリストとなったヴェロニカ・アイグナー(右、IPC公式より)

 

3番目の姉ヴェロニカ(19、B2)は、回転と大回転で2個の金メダル。ヨハネスと双子のバルバラ(16)は回転で銀、大回転で銅。2選手とも初出場でメダリストとなった。

5人きょうだいのうち3人に視覚障がいがある。長姉イルムガルドさん、次姉エリザベスさんは、音声で選手をアシストしながら滑走を先導するガイド。次姉のエリザベスさんはヴェロニカのガイドを務めた。

 

カナダ:ブライアン・マッキーバー 冬季男子最多タイ金16個

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冬季大会金メダル16個で男子選手最多タイとなったブライアン・マッキーバー(左、IPC公式より)

 

リビング・レジェンドが最後のパラを終えた。クロスカントリースキー男子視覚障がいのブライアン・マッキーバー(B3)は、スプリント、ミドル、ロングの3種目で金メダル。冬季大会の金メダル通算16個は、男子選手最多タイ。

記録更新が期待された最終日のオープンリレーは6位に終わった。

 

02年ソルトレークシティー大会から6大会連続出場で、現在42歳。日本でいえば、冬季五輪8大会連続出場を果たした葛西紀明のような存在だ。

今大会を最後に年齢、体力面を考慮して現役引退の意向を示している。

母方の祖父母が日本人の日系3世。ガイドのグラハム・ニシカワさんも祖父母が日本人。日本にもゆかりのある選手が、偉大な記録を残して第一線を退く。

(mimiyori編集部)

 

 

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参照:IPC公式サイト

International Paralympic Committee | IPC