2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。
これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。
内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「内柴道場の内装の話」。
何もかもが手作りの新道場「EDGE&AXIS」。
“内装担当”として、あれこれ悩む日々をつづる。
トレーニングスペースも確保
おはようございます。
道場のトレーニングスペースにゴムマットを敷きました。
器具も注文し、楽しみであります。
道場が出来てからというもの、
トレーニングスペースを予定していたところには
道場作りで出たら要るけど要らないもの、
使わなかったマット、
使えるかと思っていた畳、
トレーニングで使うさびたシャフト。
いろんなものが山積みになっていました。
嫌になっちゃうのだけど、
道場を作っていく中で出るものは出る。
足りないものは足りない。
必要と思っていても、要らないモノはどこにも使いようがない。
また、更衣室、キッチン、シャワー室などを作った際に余った材料は今後、追加で何かを作る時に使うんです。
あー、倉庫が欲しい。
倉庫に道場を作っているもんだから、倉庫はないんです。
でも、実際には倉庫は必要となる。
予算オーバーだけど買ったものは
出費。
先日、人を投げる力をつけるための投げ込み人形を買いました。
本当は予算オーバーなので買えない。
投げ込み人形、
これは僕のため。
僕みたいに自分が練習する環境がない人は、
たまにそこそこの選手と練習をしたとしても
技がさびついて、投げる筋力というか感覚がなくなっているので
人形でもいいから投げておかないと、人を投げる感覚がなくなってしまうんです。
買っちゃいました。
これ、ずいぶん昔も持っていました。
その昔はサンドバッグをぶん投げていました。
欲しいなって思ったモノは買わないとないし、
要らないなって思ったモノは片付けていかないと溜まっていく一方です。
知人からの贈り物
先日、スポットクーラーを知人にいただきました。
スポットクーラー。
大量の水を入れるところがあり、その水が内部で流れつつ大きなファンで風を送る機械。
気化熱を使って温度を下げる。
まあまあデカいやつ。
いよいよ片付けをしなければ。
和畳15枚、
石こうボードの切れ端いっぱい。
いろいろ、トラックいっぱいを産廃業者さんに持っていくことにしました。
物を買えば金が掛かるのは当たり前ですが、
物を捨てるのにもお金は掛かる。
いいシステムです。
「過去最高の自分」を育てる場に
面倒な手間ではありますが
会員さん、選手、保護者の方に
「この道場は素敵だね」って思ってもらえる道場を作りたい僕。
そうして
スカウトされることもスカウトする必要もない道場を作りたい。
会員さんは健康や体力向上のため。
選手は評価を気にせず、でも、自分の「過去最高」を育てて作り上げること。
その先に何があるのか分からないけれど
精一杯の自分を表現できる場所であるならば、僕はそれでいいと思う。
人と比べることではないけれど、人と競うスポーツ。
比べないけど競う。
それは人を基準として、自分と勝負している感覚をずっと感じていたからかもしれない。
(内柴 正人)
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◆内柴道場「EDGE&AXIS」公式HP
◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信
内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。
より詳しい内容について、メンバーシップ配信も開始した。
メンバーシップ配信では、今回の道場づくりについても動画をアップ中。
詳細は下記YouTubeのコミュニティ欄へ。
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うちしば・まさと
1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。
#MasatoUchishiba