2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。
これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「QUINTETに出場する話」④。
9・10QUINTETでプロデビューする桜庭大世戦を前に、教え子や仲間たちと直前練習に励んだ。
いざ、本番へ。
グラップリングの試合直前に柔道で仕上げ
合っているか分からないけれど
僕、グラップリングの試合の前に柔道をすることにしました。
理由、
グラップリング、柔術は一手先をやっと探して動いている。
分かっているんだけどつながらない、次の動きに気づけない。
柔道着を着て、柔道をすると
自分の動きどころか相手の気持ちまで見えてくる。
何分か先の決め技をいくつか準備出来る。
柔道的思考で柔術とグラップリングを見る。
むしろ、ここまで来たら学ぶことを一旦捨てて
柔道の感覚でグラップリングをする。
これでいいのではないか。
そこに落ち着きました。
もちろん、
会ったこともない、見えない相手の対策と自分の決めの技の確認もしますけど。
僕らしくいけるのは、柔道で負けないこと。
意地を張ること。
動くこと。
動き続けること。
グラップリングルールでね。
柔道ってカンターン。
普段、僕をやっつけるキルギス弟子たちも、柔道で勝負するとまあまあいい勝負。
ストレスも吹き飛ばすことが出来ました。
今、空港です。
練習は栄養ドリンクで打ち上げ
さて、
きのう、きょう、
内柴道場での練習を終えました。
練習終わりに声をかけてくれる人たち。
帰りしな、栄養ドリンクをくれる人(箱)。
栄養ドリンクをもらった。
エネルギーは分け合わなければならない。
最後に残った数人で、いただき物の栄養ドリンクで乾杯しておきました。
キルギス柔道選手から1人同行
そうして、最後の別れ。
昼から練習に付き合ってもらい、そのまま空港へみんなで行きました。
飯を食わせなければならない。
常日頃、僕ら夫婦は使命のごとく彼らに飯を食わせているのですが。
遊びじゃないから、空港に行くまでにおいしくて安い店を探すなんてことはせず、
直接空港へ。
空港=飯が高い。
それは分かっていたのですが、本当に高い。
レストランから見えるコンビニに後ろ髪を引かれつつレストランの方に入り、
腹一杯になるように赤牛うどん。
チキン南蛮定食を3人分しっかり食べさせました。
心の中で
みんなでエネルギー満タンにしてこそ、自分のエネルギーになるのだ。
とケチらず、たらふく食わせておきました。
9600円。
分け合えば少し余る。
今回は3人のキルギス選手たちのうち、1人だけ同行させます。
残る2人の胃袋に入ったうどんとチキン南蛮定食のエネルギーは、熊本から横浜まで送られてくることでしょう。
頑張るぞ。
(内柴 正人=この項おわり)
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◆内柴道場「EDGE&AXIS」公式HP
◆EDGE&AXIS 公式ショップ
◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信
内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。
より詳しい内容について、メンバーシップ配信も開始した。
メンバーシップ配信では、今回の道場づくりについても動画をアップ中。
詳細は下記YouTubeのコミュニティ欄へ。
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うちしば・まさと
1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。
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