【ゴールボール】日本最高峰の大会「ジャパンパラ」女子決勝~日本代表候補Aが優勝 /12年ロンドン金の浦田が代表引退

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優勝を決めて手を取り合うゴールボール日本代表女子Aチーム。右から欠端瑛子、高橋利恵子、天摩由貴
(撮影:丸井 乙生)

日本女子が東京2020パラリンピックで銅メダルを獲得したゴールボールの「ジャパンパラ」最終日が21年12月12日、東京・府中市の郷土の森総合体育館で行われ、女子決勝は東京2020大会代表で構成された日本代表候補Aが1-0で日本代表候補Bに辛勝した。

ジャパンパラは日本最高峰の大会の一つで、新型コロナウイルスの影響により、代表候補選手を3チームに分けて総当たり戦を実施。その上位2チームが決勝で対戦した。

決勝で敗れた代表Bチームの浦田理恵は、この日をもって代表を引退。12年ロンドン大会で団体競技初の金メダルをもたらした功労者が、日の丸のユニホームを脱ぐことになった。

 

 

 〝笑顔のキャプテン〟浦田が代表引退

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「代表引退試合」で献身的な守備を見せる浦田理恵(右=撮影:丸井 乙生)

トレードマークの笑顔は、試合中も絶えることはなかった。

ゴールボールは、視覚障がいの選手がアイシェードを着用してボールを投げ合い、相手のゴールに入れた得点を競う。

12年ロンドン大会で金メダルを獲得した司令塔・浦田理恵はこの日、日本代表Bチームのセンターを務め、後輩たちに守備位置を指示しながらプレー。ゴールボールでは、光を感じる選手もいるため、公正な試合をするために全選手がアイシェードを着用する。相手の顔も味方も顔も見えないが、浦田は常に口角を上げ、「笑顔の口」から後輩たちを鼓舞する声を上げ続けた。

 

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試合後、代表引退セレモニーに臨んだ浦田(左)。サプライズで、現主将の天摩由貴(右)から花束を贈呈されてスピーチ(撮影:丸井 乙生)

試合は、日本代表Bは代表Aに0-1で惜敗した。

「最後は勝って終わりたかった。悔しさはありますが、やれることをしっかり出し切って負けた試合でもあるのでスッキリしています」

 

試合後のセレモニーでは、現代表主将で代表Aチームの天摩由貴が浦田に花束を贈呈。サプライズで花束を贈呈にするにあたり、〝恩返し〟のために必勝を誓っていたという。

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笑顔でハグする浦田(左)と天摩(右=撮影:丸井 乙生)

尊敬する先輩について、天摩は「負けてしまったら、浦田さんからバトンを受け取ったとは言えなくなる。負けてお花を渡すわけにはいかない、と話して臨みました。司令塔としても、キャプテンとしても、先輩としても尊敬しています。つないでいただいたバトンをしっかり受け止めます」と感謝の思いを口にした。

 

 東京銅メダリスト中心の代表Aがバトン受け継ぐ

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「回転投げ」を得意とする欠端。父・光則さんはプロ野球・横浜で元投手だった
(撮影:丸井 乙生)

その天摩は、東京2020パラリンピックの銅メダルメンバー3選手の日本代表Aで出場した。男子ではスタンダードとなった投法「回転投げ」を得意とする欠端は、開始3分10秒にその回転投げで先制点を挙げた。

以降は互いに鉄壁の守備でゴールを守り、東京2020パラリンピックで初出場を果たしたセンター・高橋利恵子も的確な判断を見せて1-0で守り勝った。

 

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天摩(手前)は、実際にボールを投じる欠端(奥)とともに歩き出し、音と振動で相手をかく乱(撮影:丸井 乙生)

24年パリ大会に向け、天摩は東京2020パラリンピックで発揮した得点力をもとに、日本が得意とした「守備力」アップがカギだと考えている。代表候補選手同士で「パリの時にどんなチームになっていたいか」について話し合い、テーマを決めている段階だという。

代表を引退する浦田は、今後もゴールボールの普及活動に尽力する意向。最後のパラリンピック出場となった東京2020大会では、金メダルを獲得したトルコに1次リーグ、準決勝で敗れたことを踏まえ、トルコ勢の得点源、セブダ・アルトゥルノルクの投球について「高いバウンドで、コースもいいところに決められて失点を重ねていた。男子ではセンターが体を浮かせて捕るように、(女子も)守備の技術を高める必要がある」と分析していた。

 

 男子は宮食が土壇場同点弾&決勝弾

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男子では今大会最多得点の宮食(左から2番目)は、得点を決めて喜びのガッツポーズ
(撮影:飯野)

男子はエキシビションマッチが行われ、日本代表候補Aチームが、同Bチームと激突。激しい乱打戦が繰り広げられ、Aチームが延長戦の末、8-7で逆転勝ちを収めた。
 
前半の折り返しとなる6分時点では、スコアは2-2の同点。序盤からシーソーゲームの様相を呈していた。しかし、Bチーム・伊藤雅敏に3連続得点を決められ、前半終了までに2-5と3点のビハインドを負った。

後半は、東京2020大会代表・佐野優人が早々に2得点目を挙げるも、すぐさまBチーム・山口凌河に得点を許し3-6とされ、再び3点を追う状況に置かれた。

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必死で防戦する日本代表Bチーム・伊藤(撮影:飯野)

それでも後半4分48秒、相手のオウンゴールで4-6とすると、流れが変わり出す。東京2020大会代表・宮食行次(みやじき・こうじ)が2点を加え、スコアは6-7。あと1点という状況が続き、気づけばタイマーは残り4秒を示していた。

ここで宮食が土壇場の同点ゴール。それまで多用していたストレートからコースをクロスに変えたシュートは、見事に相手の意表を突いてみせた。

宮食は「(土壇場の状況で)良くも悪くも周りが見えていなかった」と振り返りつつも、佐野が代表合宿で発案したというこのシュートで、会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。

 

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試合後の会見に臨んだ宮食(撮影:丸井 乙生)

7-7で突入した延長戦は、打って変わってこう着状態が続いた。残り1分4秒、宮食が今度はストレートのコースでシュート。伊藤の脚で一旦跳ね上がったボールは、その行方を追った金子和也の脚に当たってゴールに入り、8-7で競り勝った。アイシェードを外して集まった3人には、喜びと安堵の表情があふれた。

 

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東京2020大会代表の佐野(撮影:丸井 乙生)

試合直後、佐野は宮食について「一球に懸けるパワーが強い男」と表現。市川喬一監督は報道陣から輝いた選手について問われると「Aチームの働きは当たり前」と高いレベルのプレーを評価しつつ、「(宮食が)おいしいところを持って行ったな」と、この日両チーム最多5得点を挙げた宮食の名前を挙げた。

東京2020大会後初の公式戦ではあるが、既に次回24年パリ大会まで3年を切っている。準備期間は短い。

佐野は「パラリンピックに出場することが夢だったが、今はメダルを獲ることが目標」とし、チームのレベルアップを誓った。

(mimiyori編集部)

 

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