【プロレス】大谷晋二郎が20年間支え続けたZERO1~旗揚げ20周年 4・10両国国技館大会

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メーンイベントで負傷した大谷晋二郎。旗揚げ20周年記念大会は熱く、楽しい大会にしたかったはずだ
(撮影:丸井 乙生)

プロレスのZERO1(ゼロワン)旗揚げ20周年&21周年記念大会が2022年4月10日、東京・両国国技館で行われた。

故・橋本真也さんが2001年3・2両国国技館大会で旗揚げした前身「ZERO-ONE」の後継団体で、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、21年に予定した旗揚げ20周年記念大会が1年延期して開催されたもの。

メーンイベントで負傷したエース・大谷晋二郎の容態が心配されるが、20年間ゼロワンを支え続けた大谷は万感の思いで大会を迎えていた。

参加は40団体80選手、ダークマッチ2試合を含め全16試合という約5時間の長丁場興行は、その20年間の思いが詰まったおもちゃ箱のような大会だった。

 

 

 

第1試合はあの頃のゼロワン〝オールスター〟

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真っ先に入場した黒田哲広(左)、セコンドの金村キンタロー(中央=撮影:丸井 乙生)

ゼロワン初期を知るファンは第1試合からクギづけとなった。

ランブル戦で行われた第1試合、まずは00年代前半に参戦していた「アパッチ軍」黒田哲広、引退しているセコンドの金村キンタローがブリブラダンスを披露。続いて、団体創始者の故・橋本真也さん(05年他界)がリングネームを決めた富豪富豪夢路、黒毛和牛太が登場した。当時の登場曲「サンバ・デ・ジャネイロ」に乗っておなじみのダンス。富豪富豪が誘って、この4人で懐かしのダンスを踊ってみせた。

 

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一緒に攻撃を仕掛ける富豪富豪夢路(中央)と黒毛和牛太(左=撮影:丸井 乙生)

3番目には、初期のゼロワンで暴れた空手家・小笠原和彦も小林昭男とともに入場した。リングインするとすぐに、そろって空手の型を披露。空手チョップで攻めかかったと思ったら、サッとよけられてそのままトップロープから落下した。登場から退場まで数分間という早業リングアウトだった。

 

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退場する小笠原和彦(撮影:丸井 乙生)

さらに、03年にデビューした当時大型新人の明石鯛我が入場。04年退団後は正道会館の門を叩き、09年にはK-1に出場した。

ゼロワン初期は、〝破壊王〟橋本さんが新加入の選手にハチャメチャなリングネームをつけることが常で、明石も兵庫県明石市出身というだけで、連想ゲームのように地元の名産を拝命してしまった。

現在は空手の指導者とあって空手着姿で現れ、旗揚げ当時を知るファンを「立派になったねえ」とばかりに喜ばせた。

 

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懐かしのリングネーム「明石鯛我」(撮影:丸井 乙生)

ランブル戦は最終的にスーパー・タイガーがランジェリー武藤の一騎打ちとなり、8分29秒、ツームストン・パイルドライバーで制した。

 

バックステージにも初期メンバー集結

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来場していた星川尚浩さん(手前)、現在は都内で天ぷら食堂を経営する炭谷信介さん。一番右は炭谷さんの長男(撮影:丸井 乙生)

会場には〝流星番長〟こと星川尚浩が来場した。04年の試合中に急逝硬膜下血腫となり、その後はリハビリを続けながらビッグマッチには来場。第13試合では、01年3・2旗揚げ戦で対戦した丸藤正道(プロレスリング・ノア)と、現役時代の〝ガウン〟である学ランを引き継いだ2代目流星番長・北村彰基(ZERO1)のタッグをリングサイドで立合人として見届けた。

また、01年旗揚げから新弟子デビュー第1号となった炭谷信介さんも子連れで来場。現在は、東京・品川区内で「天ぷら若鷹」を営んでいる。

 

レジェンドも見参

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〝レジェンドマッチ〟で勝利を挙げた藤波辰爾(撮影:丸井 乙生)

レジェンドたちも6人タッグで対戦した。第10試合は藤波辰爾、越中詩郎、LEONA VS 藤原喜明、船木誠勝、アレクサンダー大塚。〝破壊王〟橋本さんが新日本プロレス時代から対戦を熱望していた天龍源一郎が立合人を務め、試合前に「橋本選手も天国で喜んでいると思います。みなさん、プロレスを楽しんでください」とあいさつした。

 

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試合前にあいさつする天龍源一郎(写真:丸井 乙生)

〝組長〟こと藤原の頭突きも、越中のヒップアタックも健在。大塚はジャイアントスイング、藤波とLEONAはそれぞれ親子ドラゴンスクリューも披露し、最後が藤波が10分18秒、ドラゴンスリーパーで大塚を下した。

 

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気合みなぎる動きで場内を沸かせた越中詩郎(撮影:丸井 乙生)

 

▼藤波辰爾 これだけ団体が多くなっている中で残っていくのは大変だけど、(ゼロワンは)選手も育っている。

▼天龍源一郎 20年続いてきたというのもすごいし、たくさんの選手が一堂に会するのもすごい。橋本選手がつくった団体らしくハチャメチャで、破天荒。

 

〝破壊王〟長男・大地は原点の地で凱旋勝利

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橋本大地は父が立ち上げた団体、そして自身がデビューしたZERO1の両国大会で凱旋勝利
(撮影:丸井 乙生)

第12試合では〝破壊王〟の長男・橋本大地(大日本プロレス)が6人タッグマッチでZERO1の若手・永尾颯樹に15分58秒、STFで勝利を収めた。

大地にとってZERO1の両国大会は原点の地でもある。父・真也が創設した団体の旗揚げ戦、そして大地自身も11年3・6に蝶野正洋を相手にデビュー戦を行った場所だ。

14年退団後はIGFを経て、16年から大日本プロレス所属に。「橋本真也の息子」ではなく、「プロレスラー・橋本大地」として一本立ちした。

 

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火野&葛西から「眉山」で投げられる橋本大地(一番上=撮影:丸井 乙生)

この日は関本大介、岡林裕二とともに、元ZERO1の火野裕士、葛西純、そしてZERO1の若手・永尾颯樹と激突した。熱い肉弾戦となり、火野&葛西から連結式ジャーマン・スープレックス「眉山」を浴びる場面も。それでも、最後はリングサイドで見守る蝶野に自身のデビュー戦でギブアップを喫したSTFを永尾にかけて快勝した。

「11年前に(この両国で)やられたまんま、若手をつぶしてやったよ。でも、熱気がすごいね」

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敗れたZERO1の永尾は中学時代に大谷の講演を聞いてプロレス入り。葛西から「松尾、お前、熱いじゃねえか」と褒められ、火野からも「松尾!」と激励された。名前は覚えてもらえなかったが、熱い戦いぶりは先輩の記憶に確かに残った(撮影:丸井 乙生)

デビューから11年。22年4月13日で30歳となる。かつて「闘魂三銃士」として一世を風びした父の背中を追ってプロレス入りしたが、「(父は)別次元。そこは目指していない」と、自分のプロレスを追究している。

 

永田はZERO1の若手に〝未来創造〟のエール

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20年前の旗揚げ戦にも出場した永田裕志(撮影:丸井 乙生)

01年3・2両国国技館の旗揚げ戦に出場した永田裕志(新日本プロレス)は8人タッグマッチで参戦。小島聡、タイガーマスク、高岩竜一とともに、ZERO1の若手トリオ太嘉文(たかふみ)、松永準也、佐藤嗣崇、そしてゼロワン初期から参戦していた横井宏考の〝ZERO1軍〟と対戦した。

旗揚げ戦では橋本さんが故・三沢光晴さんと対戦するドリームマッチが実現。橋本さんのタッグパートナーが永田だった。橋本さんは新日本での先輩であり、大谷も新日本の後輩にあたる。

「橋本さんが僕を選んでくれたことでいろんなことに挑戦できて、僕としてはあの時の橋本真也がつくったゼロワンには感謝しても感謝しきれない。橋本さんがつくり、大谷が紡いできた団体。こうやって20年、ゼロワンが続いていることも感慨深い」

試合は、新日本からZERO1の旗揚げに参加、そして2度退団している高岩が14分57秒、松永に変形ドライバーで敗れた。

 

永田はリング上でZERO1の若手選手たちに「新しいゼロワンをつくっていけよ」と激励。会場には橋本さんの入場曲「爆勝宣言」が流れた。

「いい意味でも悪い意味でも若さだね。バタバタしているところもあるけれど、若い人間が持つ情熱が感じられた」とエールを送っていた。

 

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太嘉文は「オレは大谷晋二郎の背中は負わない。あの人の横に並ぶと決めた」と決意表明(撮影:丸井 乙生)

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佐藤嗣崇は小1の時に観戦していた小島聡と対戦できて感無量。「そんな格闘技、ありますか?夢をかなえられた」と目を輝かせた(撮影:丸井 乙生)

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地元の西武ドームでゼロワンの大会開催を誓った松永(右から2番目)。左は横井、右は太嘉文(撮影:丸井 乙生)

セミファイナルでは、大谷の盟友・田中将斗が元全日本プロレス、元米WWEの鈴木秀樹と激闘。14分47秒、ダブルアームスープレックスで敗れはしたが、圧巻の試合を見せつけた。

続くメーンイベントで大谷が試合中に後頭部を打って動けなくなった際は、まだ会場が大けがだと認識する前に、相棒の異変を察知して控室からリングサイドに駆けつけた。

 

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メーンイベント前に両国国技館を見渡す大谷(撮影:丸井 乙生)

その大谷は両国国技館から救急車で都内の病院へ搬送され、頸髄損傷と診断。13日に手術を受け、14日からは転院して治療を進めている。

ZERO1によると、全国各地から大谷への支援を申し出る声が多数上がっており、大谷の家族・親族と相談、そして大谷本人の意思を確認した上で、週明けには支援態勢について発表するとしている。

大谷はZERO1に加入して以来、プロレスラーとしてリングに上がるだけでなく、「いじめ撲滅」を目指して講演、団体のリーダーとして営業活動など全国を飛び回る多忙な日々を20年間送ってきた。

大会前のバックステージで、大谷は記念大会を祝福に訪れた記者に言った。

「この大会が終わったら、抱き合って喜びましょうね」

 

心優しき熱血漢。できるだけ軽傷であることを誰もが祈っている。

(丸井 乙生)

 

◆試合結果

1.ランブル20分
◯スーパー・タイガー(8分29秒片エビ固め)ランジェリー武藤●
※ツームストン・パイルドライバー
※退場順、小笠原和彦&小林昭男、戸井克成、富豪富豪夢路、明石鯛我、黒毛和牛太、黒田哲広with金村キンタロー、朱崇花

2.20分1本勝負
ハートリー・ジャクソン、●佐野直(8分41秒 カイケツ→ 片エビ固め)TARU、将軍岡本〇

3.20分1本勝負
〇大家健、今成夢人、花見達也(9分9秒 炎のスピア→ 片エビ固め)橋本友彦●、雷電、櫻井匠

4.30分1本勝負
〇ジャガー横田、神取忍(4分32秒 回転エビ固め)ダンプ松本、クレーン・ユウ●

5.30分1本勝負

菅原 拓也、●アンディー・ウー、ジェイソン・リー(8分36秒 ラ・ギターラ)日高郁人、スペル・クレイジー〇、NOSAWA論外

6.2AW認定タッグ選手権試合 60分1本勝負
クリス・ヴァイス、●横山 佳和(11分58秒 UNREAL→ 体固め)吉田綾斗〇、エクシリオ

7.30分1本勝負
アジャコング、まなせゆうな、●NATSUMI(10分19秒 雪崩式ブレーンバスター→ 体固め)井上京子〇、藤本つかさ、梅咲遥

8.30分1本勝負
●ヤス久保田、ヒデ久保田(10分28秒 ムーンサルトプレス→ 片エビ固め)宮本裕向〇、木高 イサミ

9.30分1本勝負
●馬場拓海(12分42秒 ファイヤーバードスプラッシュ→ 片エビ固め)青柳亮生〇

10.30分1本勝負
〇藤波辰爾、越中詩郎、LEONA(10分18秒 ドラゴンスリーパー)藤原喜明、船木誠勝、アレクサンダー大塚●

11.インターナショナル&世界ジュニア2冠選手権試合 30分1本勝負
●阿部史典(8分12秒 アストロクラッチ)アストロマン〇

12.30分1本勝負
火野裕士、葛西純、永尾颯樹●(15分58秒 STF)関本大介、橋本大地〇、岡林裕二

13.30分1本勝負
丸藤正道、●北村彰基(13分41秒 キングコングラリアット→ 片エビ固め)近藤修司〇、稲葉大樹

14.30分1本勝負
太嘉文、〇松永準也、佐藤嗣崇、横井宏考(14分57秒 変形ドライバー→ 片エビ固め)永田裕志、小島聡、タイガーマスク、高岩竜一●

15.30分1本勝負
●田中将斗(14分47秒 ダブルアームスープレックス→片エビ固め)鈴木秀樹〇

16.世界ヘビー級選手権試合 シングルマッチ30分1本勝負
〇王者・杉浦貴(16分44秒TKO レフェリーストップ)挑戦者・大谷晋二郎●

 

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