企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の自然コラム。つれづれなるままに、今回は「動物の名前の付いた植物シリーズ」の第2弾。人に話す時は、鳥の話? それとも植物の話? と混乱を招きかねないので注意が必要です。
鳴くまで待っても鳴かないホトトギス
「ホトトギス」はユリ科ホトトギス属の草本で、日本の在来種。主に、関東地方以西の本州や、四国、九州に自生している。6枚の花被片にある紅紫色の斑点が、鳥のホトトギスの胸の模様に似ていることが名前の由来。開花時期は8~9月。花は雌しべの花柱が3つに分かれ、各裂片は先端がさらに2つに分裂するという独特の形をしている。
「タイワンホトトギス」は台湾原産で、日本では沖縄・西表島で野生化している。花期は9~10月。花は「ホトトギス」に比べるとやや小さく、花被片の色も薄く地味な感じを受ける。一般的に草本や樹木の花は、外来種(明治以降、日本に伝来したもの)の花の方が在来種(日本の固有種)に比べ花の形が大きく派手なものが多いが、タイワンホトトギスは逆の印象がする。
「ヤマホトトギス」(トップ写真)、「ヤマジノホトトギス」(写真㊤)は、ともに日本の在来種で山野の林内に生える。花期はヤマホトトギスが7~9月、ヤマジノホトトギスは1カ月ほど遅れて開花する。両花とも似ているが、ヤマホトトギスの花被片は下側に反り返るのに対し、ヤマジノホトトギスの花被片は平開する。
羽を広げても飛び立たないサギ
「サギソウ」はラン科ミズトンボ属の草本で、白サギが羽を広げて飛ぶ姿に見えることが名前の由来。本州、四国、九州に分布しているが、最近は土地の開発や乱獲などの影響で減少し、東京近辺で自生のものを見たことがない。6年前に「九州の尾瀬」と云われる佐賀県唐津市の樫原(かしばる)湿原を訪れた際、自生のサギソウを見て感激したことを思い出した。花期はちょうど今頃の7~8月で、ラン科の花らしく独特の形をしている。
ヒヨドリの好物が実る野草
「ヒヨドリジョウゴ」はナス科ナス属のつる性草本で、日本全国に生え、住宅地でもよく見かける。秋に赤く熟した実をヒヨドリ(ほかの鳥も)が食べることが名前の由来。この赤い実は人間にとって有毒だが、茎葉は解熱やヘルペスに薬効があるといわれている。花期は8~9月、花は白色でバドミントンのシャトルに似ている。
ホーホケキョに合わせて咲く花
「ウグイスカグラ」はスイカズラ科スイカズラ属の落葉低木で、別名は「ウグイスノキ」。一説では、ウグイスが「ホーホケキョ」とさえずりを始める時期に咲き始めることから命名された。また、「カグラ」は小鳥を捕らえる場所の「狩り座」が転訛したとの説もある。
日本の固有種で北海道の一部を除く全国に分布している。花期は4~5月だが、東京近辺では3月頃から11月頃まで花が見られる。花は淡紅色。1~2センチの漏斗状で先端が5つに分かれ、下向きに咲く。6月頃に赤く熟した実は、甘味があって食べられる。
(安藤 伸良)