【雑学】自然観察指導員の徒然草=動物の名前の付いた植物シリーズ~鳥類編

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東京・国立科学博物館附属自然教育園に咲いていたヤマホトトギスの花。2017年9月20日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の自然コラム。つれづれなるままに、今回は「動物の名前の付いた植物シリーズ」の第2弾。人に話す時は、鳥の話? それとも植物の話? と混乱を招きかねないので注意が必要です。 

 

 

 

 

鳴くまで待っても鳴かないホトトギス

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東京・新宿御苑のホトトギスの花。鳥のホトトギスとの共通点は斑点模様だった。2009年10月18日 (撮影:安藤伸良)

「ホトトギス」はユリ科ホトトギス属の草本で、日本の在来種。主に、関東地方以西の本州や、四国、九州に自生している。6枚の花被片にある紅紫色の斑点が、鳥のホトトギスの胸の模様に似ていることが名前の由来。開花時期は8~9月。花は雌しべの花柱が3つに分かれ、各裂片は先端がさらに2つに分裂するという独特の形をしている。

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東京・浜離宮恩賜庭園に咲いていたタイワンホトトギスの花。2012年11月1日 (撮影:安藤伸良)

「タイワンホトトギス」は台湾原産で、日本では沖縄・西表島で野生化している。花期は9~10月。花は「ホトトギス」に比べるとやや小さく、花被片の色も薄く地味な感じを受ける。一般的に草本や樹木の花は、外来種(明治以降、日本に伝来したもの)の花の方が在来種(日本の固有種)に比べ花の形が大きく派手なものが多いが、タイワンホトトギスは逆の印象がする。

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東京・殿ヶ谷戸庭園で見かけたヤマジノホトトギスの花。ヤマホトトギスと見分ける方法は花びらの開き方の違いを見ること。2017年9月29日 (撮影:安藤伸良)

「ヤマホトトギス」(トップ写真)、「ヤマジノホトトギス」(写真㊤)は、ともに日本の在来種で山野の林内に生える。花期はヤマホトトギスが7~9月、ヤマジノホトトギスは1カ月ほど遅れて開花する。両花とも似ているが、ヤマホトトギスの花被片は下側に反り返るのに対し、ヤマジノホトトギスの花被片は平開する。

羽を広げても飛び立たないサギ

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佐賀・樫原湿原で見つけたサギソウの花。今にも飛び立ちそうな姿が愛らしい。2014年8月19日 (撮影:安藤伸良)

「サギソウ」はラン科ミズトンボ属の草本で、白サギが羽を広げて飛ぶ姿に見えることが名前の由来。本州、四国、九州に分布しているが、最近は土地の開発や乱獲などの影響で減少し、東京近辺で自生のものを見たことがない。6年前に「九州の尾瀬」と云われる佐賀県唐津市の樫原(かしばる)湿原を訪れた際、自生のサギソウを見て感激したことを思い出した。花期はちょうど今頃の7~8月で、ラン科の花らしく独特の形をしている。

 

ヒヨドリの好物が実る野草

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東京・善福寺公園のヒヨドリジョウゴの花。秋になると赤い実にヒヨドリが寄ってくる。2018年6月13日 (撮影:安藤伸良)

「ヒヨドリジョウゴ」はナス科ナス属のつる性草本で、日本全国に生え、住宅地でもよく見かける。秋に赤く熟した実をヒヨドリ(ほかの鳥も)が食べることが名前の由来。この赤い実は人間にとって有毒だが、茎葉は解熱やヘルペスに薬効があるといわれている。花期は8~9月、花は白色でバドミントンのシャトルに似ている。

ホーホケキョに合わせて咲く花

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東京・善福寺公園に咲いていたウグイスカグラの花。2020年3月9日 (撮影:安藤伸良)

「ウグイスカグラ」はスイカズラ科スイカズラ属の落葉低木で、別名は「ウグイスノキ」。一説では、ウグイスが「ホーホケキョ」とさえずりを始める時期に咲き始めることから命名された。また、「カグラ」は小鳥を捕らえる場所の「狩り座」が転訛したとの説もある。

日本の固有種で北海道の一部を除く全国に分布している。花期は4~5月だが、東京近辺では3月頃から11月頃まで花が見られる。花は淡紅色。1~2センチの漏斗状で先端が5つに分かれ、下向きに咲く。6月頃に赤く熟した実は、甘味があって食べられる。
(安藤 伸良)