元F1レーサーでCART王者
イタリア出身のザナルディは1966年10月23日生まれ。日本では「アレックス・ザナルディ」または「アレッサンドロ・ザナルディ」と呼ばれ、特にモータースポーツ好きの間ではよく知られている。91年に当時のジョーダンからF1デビューを果たし、92~94年はミナルディやロータスからF1に参戦。93年ブラジルGPでは自身F1最高位となる6位に入った。
その後、ザナルディは当時の北米トップオープンホイールシリーズであった「CART(Championship Auto Racing Teams)」に転向して本領発揮。97、98年には2年連続でチャンピオンとなり、ホンダエンジンとともに圧倒的な強さを誇った。
両脚切断もカーレース復帰
そんなザナルディが生命の危機に立たされたのが2001年。ドイツでのレース中に時速300キロ以上でクラッシュする大きな事故に遭った。両脚切断を余儀なくされた重傷で、一時は出血多量のため命も危ぶまれた。ところが、わずか2年後にカーレースに復帰し、05年には世界ツーリングカー選手権に出場。義足で操作できるブレーキを使用し、通算4勝を挙げた。
パラリンピックで2大会連続金メダル
09年にカーレースを引退したが、ザナルディの挑戦はここでも終わらない。すぐに12年ロンドンパラリンピック出場を目指し、自転車競技のハンドサイクルに本格転向した。すでに、カーレース引退前から練習を始めていたというハンドサイクルでもすぐに頭角を現し、予定通りにロンドン大会に出場。タイムトライアルとロードレースの2種目で金、混合チームリレーで銀と計3個のメダルを獲得した。
「事故は人生における最大のチャンス」
これまでの人脈を生かしながら、自ら義足や車いす、ハンドサイクルを製作していることも、同じような障がいを持つ人々にとっての力となってきた。2大会連続で出場した16年リオでもタイムトライアルとリレーの2種目で金メダルに輝いたザナルディはレース後、英国BBCの取材に対してこう話している。
「わたしの事故、わたしの身に起きたことさえ、人生における最大のチャンスとなった。今していることのすべては、わたしの新しい状況に関連している」
「とても幸運だと感じている。自分の人生は果てしなく恵まれていると感じる」
イタリア紙などの報道によると、依然、予断を許さない状況が続いているものの、7月末に受けた4度目の手術後の容態は安定しているという。突然の不幸さえも幸運やチャンスととらえられる力を、コロナ禍の今こそ世界に見せつけてほしい。再び襲われた苦境を、不屈の精神で吹き飛ばしてほしい。
(mimiyori編集部)