ヘビらしさゼロのヘビイチゴ
東京・善福寺公園で見つけたヘビイチゴの実。正直、おいしくはない。
2015年5月22日 (撮影:安藤伸良)
名前だけ聞くとちょっと怖い「ヘビイチゴ」はバラ科ヘビイチゴ属の多年草で、田んぼの畔や公園などのやや湿った場所に普通に見られる。開花時期は春の4~6月。葉腋から花柄を出し、大きさ1センチほどの小さな黄色の五弁花を付ける。
6~7月になると小粒の苺に似た赤い実ができる。有毒ではないが、食べてみても何の味もしない。人間は食べず、「ヘビにでも食わせておけばいい」などと言ったことから、ヘビイチゴと名付けられたとされる。近い仲間に花も実もやや大きい「ヤブヘビイチゴ」がある。こちらも決しておいしくはないため、食べても「やぶへびになる」だけです。
ホタルは入ってないホタルブクロ
東京・井の頭公園付近に咲いていたホタルブクロの花。
2010年5月27日 (撮影:安藤伸良)
「ホタルブクロ」はキキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、山野や丘陵に生える。花期は6~7月で、茎上部に淡紅紫色や白色の4~5センチの鐘形をした花を付ける。
名前の由来は、子供が花の中にホタルを入れて遊んだとの説や、花の形が火垂(ほたる=提灯の古語)に似ているからとの説がある。「ツリガネソウ」、「トウロウバナ」、「チョウチンバナ」、「フウリンソウ」等々、地方により呼び名は多彩だが、皆さんのお住まいの地域では何と呼ばれていますか?
触れても吸いつかないタコノアシ
野川公園のタコノアシの実。秋になると金平糖のような形をした実ができる。
2007年11月4日 (撮影:安藤伸良)
「タコノアシ(蛸の足)」はタコノアシ科(ベンケイソウ科)タコノアシ属の多年草で、湿地や沼、休耕田などに生える。近年は広い川原がなくなったことで生息範囲が狭まり、絶滅危惧種に加えられている。
花期は8~9月で、花序の枝に花弁のない小花が密に付く。花や実がびっしり並んだ姿が吸盤の多い蛸の足に似ていることが名前の由来で、特に秋に紅葉した花序は茹でた蛸の足にそっくり。
秋に鳴かないマツムシソウ
長野県小諸市の飯綱山公園に咲いていたマツムシソウの花。
2014年10月18日 (撮影:安藤伸良)
「マツムシソウ」はマツムシソウ科マツムシソウ属の多年草で、山地の草原に生える。日本や朝鮮半島が原産。花期は8~10月で、長い花柄の先に紫色の頭花が上向きに咲く。頭花は小さな花の集合花で、4センチほどの大きさになる。
花の咲く時期が夏から秋にかけてで、ちょうど松虫が鳴く頃であることが名前の由来とされている。また、紡錘形の実が「松虫鉦(まつむしがね)」と呼ばれる仏具の鐘と似ていることから名付けられたとの説もある。
牙をむかないワニグチソウ
「ワニグチソウ」はユリ科アマドコロ属の多年草で、山野の草地に生える、花期は4~5月。葉腋から花柄を出し、白色で先端が緑を帯びた2センチほどの筒状の花が下向きに咲く。近い仲間に「アマドコロ」、「ナルコユリ」などがある。花を包む2個の苞(ほう=つぼみを包む小型の葉)が、神社の軒に吊るす仏具の鰐口(わにぐち)に似ていることが名前の由来と言われている。
夜になっても飛ばないコウモリソウ
「コウモリソウ」はキク科コウモリソウ属の多年草で、山地の林内に生える。花期は8~10月。茎先の花柄に白色や淡黄色の円筒形の小花をまばらに付ける。名前の由来は、葉が三角状のほこ形で、蝙蝠(こうもり)が羽を広げた形に似ていることから付けられたとのこと。
虫とは無縁のオケラ
長野県・入笠すずらん山野草公園に咲いていたオケラの花。
2016年9月2日 (撮影:安藤伸良)
「オケラ」はキク科オケラ属の多年草で、やや乾いた草地に生える。花期は9~10月で、茎先に2センチほどの白色、もしくは薄い紅色の筒状花を付ける。万葉集では「ウケラ」と言われていたものが転じて「オケラ」になったと言われている。昆虫の「オケラ」とは関係がないらしい。
(安藤 伸良)