【雑学】自然観察指導員の徒然草=不吉どころかめでたい花!ヒガンバナは紅白あるって知っていましたか?

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東京・野川公園に群生するヒガンバナ。真っ赤な大群が目に鮮やか。2009年9月24日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の自然コラム。つれづれなるままに、今回は日本の秋の花として親しまれている「ヒガンバナ(彼岸花)」を紹介する。映画や歌謡曲のタイトルにも登場することから「真っ赤な花」の印象が強いが、意外にも白いヒガンバナもある。

 

 

 

 

「天界に咲く花」

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東京・石神井公園に咲いていた紅白のヒガンバナの花。2016年9月10日 (撮影:安藤伸良)

「ヒガンバナ」は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草で、秋のお彼岸の時期に、田んぼのあぜ道や土手、墓地などに生える。今でこそ日本の秋の原風景と思われているが、古い時代に中国から帰化したとされる。別名の「マンジュシャゲ(曼殊沙華)」は、梵語で「天界に咲く花」を意味しているという。

 

花と葉は同時に見られない

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東京・国分寺でタイミングよく見かけたヒガンバナの花とナミアゲハ。2017年9月29日 (撮影:安藤伸良)

 

開花時期は9月で、花茎に鮮やかな紅色の花を数個つける。細長い6個の花被片は反り返り、雄しべと雌しべが突き出る変わった形をしている。よくアゲハ蝶が吸蜜に来ているところを見かけるが、日本のヒガンバナはほとんどタネができず、稀にできたタネも発芽しない。代わりに鱗茎で増えていく。

開花中は葉がなく、花が終わった後に、葉が出て光合成をして鱗茎に養分を溜め、翌年の夏前に葉は枯れる。このため「花時に葉見ず、葉時に花見ず」という別名もある。

呼び名は1000以上?

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東京・善福寺公園に咲いていたヒガンバナの花。2018年9月14日 (撮影:安藤伸良)

 

ヒガンバナは全国で見られることから、地方により1000以上の呼び名があるといわれている。例えば、「死人花」、「地獄花」、「幽霊花」、「毒花」、「痺れ花」、「狐の松明」、「狐花」、「雷花」、「剃刀花」など。なんとなく不吉な感じの名が多いのは、墓地でよく見られることや、鱗茎にアルカロイド系の毒があることなどが影響していると考えられる。

変わった名前に「家に持ってくると火事になる」と言うのがあるそうだが、鮮紅色の花色から付いたものだろうか。皆様の住まわれている地域では何と呼んでいますか?

シロバナ探しもおすすめ

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東京の自宅付近で見かけたシロバナマンジュシャゲの花。2015年9月12日 (撮影:安藤伸良)

鮮紅色の花の他に、「シロバナマンジュシャゲ(別名:シロバナヒガンバナ)という白い花を見かけることがある。これはヒガンバナの雑種で、ヒガンバナとショウキランが自然に掛け合わさったものと言われている。ヒガンバナと同様に、タネはできない。 花期は8~9月で、花は白地にピンクや黄色の筋が入っている。花色には個体差があり、いくつかの品種、変種があるため、ようやく夏の酷暑から解放されたこれからの時期は、近場でいろいろ探してみるのもおもしろい。
(安藤 伸良)