【雑学】自然観察指導員の徒然草=冬は松の木も腹巻が必需品 「こも巻き」って何?

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松のこも巻き 杉並区の善福寺公園 2014年12月24日 安藤伸良撮影

自然観察指導員とは、自然を守る登録制のボランティアのこと。「自然観察からはじまる自然保護」を合言葉に、日本各地で地域に根ざした自然観察会を開き、自然を守るための仲間づくりに励んでいる。

日本自然保護協会が主催する指導員講習会を受講、修了して登録申請すれば、誰でも登録可能。企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、63歳で登録、指導歴13年を超えたシニア指導員の自然コラムを紹介する。

つれづれなるままに、今回は冬に見られる樹木の腹巻、「こも巻き」とは。

 

 

江戸時代からの害虫対策

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松のこも巻き 杉並区の善福寺公園 2014年12月24日 安藤伸良撮影

冬になると、日本各地で樹木の“寅さん”を見かけるようになる。

まるで腹巻のような「菰(こも)巻き」とは、松につく害虫を駆除するために菰(藁で編んだむしろ)を木に巻き付けたもの。

江戸時代から松の害虫に悩まされてきた大名庭園で行われてきたといわれる。

マツケムシ退治

夏から秋にかけてマツ科の樹木(赤松、黒松、ヒマラヤ杉など)の葉を食べるマツケムシ(マツカレハの幼虫)は、晩秋に幹を降り、樹皮の割れ目や落葉の中などで冬を越す。

春になると幹を登って再び葉を食べ始めてしまうため、一般的には11月初旬の立冬前後に松やヒマラヤ杉の幹の地上2メートルほどの高さに菰を巻き付ける。

巻いた菰の上部はマツケムシが入りやすいように縄で緩く一重に縛り、逆に下部は二重にきつく縛って逃げ出せないようにする。こうすることで、幹を降りてきたマツケムシは暖かい菰の中で冬を過ごす。

春になって虫が活動を始める3月初旬の「啓蟄(けいちつ)」直前に菰を外し、マツケムシを一気に退治するのだ。

昆虫の宝庫

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こも巻きで見つかったヤニサシガメ 杉並区の善福寺公園 2014年3月12日 安藤伸良撮影

筆者の地元にある善福寺公園(東京・杉並区)には、2つの池「上の池」「下の池」の周りに合わせて20本ほどの赤松、黒松があり、毎年11月上旬に菰が巻かれる。

この公園で、小学生や親子を主な対象にした自然観察会を仲間の自然観察指導員とともに年4回開催しているが、公園のサービスセンターの了解を得て、14年から毎年2月中旬に「菰開き」の観察会を行っている。例年6~10本の松の菰を開いてきたが、害虫のマツケムシはこれまで6年間で0~33匹と数は多くなかった。

代わりに、マツケムシの天敵であるヤニサシガメやクモ(エビグモ、カニグモ、ハエトリグモなど)が多数、越冬していた。この他にも、カメムシ、テントウムシ、ゴミムシ、ハムシ、ゾウムシなどの昆虫が見られた。

 

親子で夢中の観察会

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親子自然観察会でのこも開き 杉並区の善福寺公園 2016年2月21日 安藤伸良撮影

菰を開くと昆虫やクモは一斉に逃げ出していく。どんな昆虫がいたかを調べるために捕まえて捕虫瓶に入れるのだが、子供たちと一緒に保護者までもが夢中になって虫を追い掛け回す姿は実に微笑ましい。

昆虫への配慮も忘れずに

開いた後の菰は焼却処分されるため、害虫駆除の効果に比べ、益虫を殺してしまう結果となってしまう。他の公園でも同じような結果となるところが多く、最近では菰巻きをやめる所が増えてきているという。

このため、善福寺公園の観察会では外した菰は十分にたたき、マツケムシ以外の虫を逃がすようにしている。

菰巻きは、雪吊りと同様に、日本の冬の風物詩。残してほしいと思うのだが、越冬している昆虫、クモにも配慮してやることも必要だ。(安藤 伸良)