ちょっとした雑学をさらに深掘りし、「これで卒業論文でも書くのだろうか」というあたりまで掘り下げるシリーズ「ガチで調べたトリビア」コラム。
今回は、「桃太郎は何者なのか」についてリサーチ。なぜ桃なのか、そして川を流れる必要性は…?
温故知新のリサーチで桃太郎誕生にまつわる、埋もれた秘話が見えてきた。
伝説の妖怪「アマビエ」も復活する時代
アマビエという妖怪を知っているだろうか。甘エビを想像してしまうが、風貌も似ていなくもない。
外見は人魚のようで、鳥のようなくちばしがあり、「病が流行ったら私の写し絵を人々に見せよ」と言い残し、海へ消えたとの言い伝えがある。
江戸時代の肥後(熊本)に登場したという予言獣だが、最近では、新型コロナウイルスに対する疫病除けとしての期待が高まっている。
また、100年ほど前に流行したスペイン風邪の際、旧内務省はマスクの着用を励行し、着用しない人には電車の利用を禁じることも検討。さらにマスクを入手できない市民への給付策を講じるよう通達したということまで、現代のそれとまるっきり変わらない。
アマビエも桃太郎も温故知新
医学が発達した現代においてもなお、疫病の流行はとどまることを知らず、100年前に類推される対策が重要視される。疫病除けを過去のものと見くびるのもまだ早い。
今こそ、温故知新、故きを温(たず)ねて新しきを知るべきなのではないか。
そこで古き良き日本の昔話、みなさんお馴染みの桃太郎についてひもといて行きたい。
いまや、“桃から生まれたから桃太郎”という通説は、日本人の固定概念と化しているが、「桃太郎はなぜ桃から生まれたのか」は以前謎のままだ。
大人の事情、桃は魔除けとして重宝されていたなど意外な事実が見えてくる。
家来が栗、はさみ、臼…?
まず桃太郎伝説とは、主に桃太郎が鬼退治に行く話が、全国各地で言い伝えられているもので、地域ごとに違った味を出す。
岡山のオリジナル民話と思う向きもあるが、実は「愛知」「香川」「山梨」「青森」にもあり、それぞれの桃太郎伝説が存在する。
各地の伝説において、誕生の仕方や設定が様々で、家来として栗、はさみ、臼が登場したり、鬼退治ではなく嫁探しという話もあり、地域の特性が滲み出ていること請け合いだ。
また、全国の民俗を研究した柳田國男の「桃太郎の誕生」によると、
「夫婦が花見に行ったら、桃太郎が出てきた」
「地獄から鳥が手紙を持ってきたので鬼退治に出掛けた」
など、ビックリ温故知新説は枚挙にいとまがない。
しかし、全ての伝説に共通しているのが、桃というキーワードである。
なぜ桃が物語の中で重要な役割を果たす存在となったのだろうか。
魔を祓う果物
柳田國男は日本には古来から、神・偉人は小さく生まれてくるという「卵生神話」「小さ子」という考え方があり、桃から生まれた理由もそこにあると分析した。
例えば「かぐや姫」でも、小さな女の子が竹から誕生するなど、人間界-天界を結ぶ人物は小さく、意外なものから生まれ出ている。
また、日本では古事記において、イザナギが死んだイザナミに追いかけられたが、桃を投げつけたら逃げ切れたという記述があり、魔を追い払う果物と考えられていた。
ひな祭りで桃の花が使われることにもその文化が見て取れる。
しかし現在、節分では桃まきではなく、豆まきが行われている。その理由は、桃への信仰が徐々にすたれる中、魔除けとして登場した大豆には霊力があると信じられたからと言われ、室町時代には節分の豆まきが定着していたという。
確かに桃を投げつけられるのは痛い。それに投げてしまったは最後、もうその桃を口にする事はできないのは、食欲的にも経済的にもつらい。豆は拾って…。
(続く=五島由紀子)