【雑学】自然観察指導員の徒然草=さわるな危険! 食べるな危険! 身近な有毒植物(後編)

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こんなに綺麗な花も実は…

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。

 

つれづれなるままに、今回は「身近な有毒植物」を紹介する。

 

草本や樹木には、人間(動物)にとって有毒なものも少なくない。サイカチ、バラ、カラタチ、ハリギリなど棘(とげ)のあるものや、ウルシ科のヤマウルシ、ツタウルシ、ハゼノキ、ヌルデやイチョウの銀杏の実など人によってはかぶれるものなど多種ある。

 

ここでは普段から見かける植物で、触れてはいけない、あるいは食べてはいけない有毒なものを取り上げる。美しさに誘われて近づくと、かなり危険かもーー

 

 

虫の命を守るムラサキケマンの毒

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東京・善福寺公園のムラサキケマンの花。2015年4月7日 (撮影:安藤伸良)

「ムラサキケマン(紫華鬘)」は、ケシ科キケマン属の多年草。日本全国のやや湿った所に生える。花期は4~6月で、花茎の先に長さ約1~2センチの筒状の紅紫色の花をびっしりと付ける。

 

全草が有毒で、プロトピンという有毒物質を含んでいる。誤食すると嘔吐、呼吸困難、心臓麻痺で苦しむとされる。ウスバシロチョウの幼虫はこの葉を食べて毒を体内に貯め、成虫になっても毒を持つことで捕食者から身を守っている。

 

「悪しき実」のシキミ

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東京・国立科学博物館附属自然教育園に咲くシキミの花。2016年3月6日 (撮影:安藤伸良)

「シキミ(樒)」は、マツブサ科シキミ属の常緑小高木。東北地方南部以南の本州、四国、九州、沖縄の山地に分布している。花期は3~4月で、葉腋に直径2~3センチの黄白色の花を付ける。

 

葉は揉むと良い香りがするため、万葉の時代から線香や抹香の原料に使われていた。しかし、植物全体は有毒。特に種子は猛毒で、誤って食べると嘔吐やけいれん、呼吸困難などを起こす。名前の「シキミ」も「悪しき実」が訛ったものと言われている。

 

料理に添えてはいけないアジサイ

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東京・神田川沿いに咲いていたガクアジサイの花。2012年6月3日 (撮影:安藤伸良)

「アジサイ(紫陽花)」は、アジサイ科アジサイ属の落葉性低木。日本の梅雨を彩る花として広く愛されているが、葉は有毒とされる。

 

厚生労働省の公式サイトには、2008年に飲食店で料理に添えられた装飾用のアジサイの葉を食べたことによる食中毒事例が相次いだと紹介されている。葉には「青酸配糖体」という植物由来の有毒成分が含まれ、誤って食べると嘔吐、吐き気、めまいなどの症状が出ると警告している。

 

キョウチクトウは素手NG

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東京・井の頭公園のキョウチクトウの花。2018年5月29日 (撮影:安藤伸良)

「キョウチクトウ(夾竹桃)」は、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑小高木。インドから地中海の原産で、日本には江戸時代中期に渡来した。

 

花期は6~9月で、枝先に花序を出し、赤、ピンク、白色の花を付ける。見た目が鮮やかで、大気汚染や病気に強いことから街路樹・公園樹として利用されているが、葉、花、枝など植物全体が猛毒。素手で粘液に触れただけでも炎症を起こすため、剪定の際は十分に注意する必要がある。

 

鹿も怖くて食べないアセビ

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東京・井の頭公園のアセビの花。2009年2月28日 (撮影:安藤伸良)

「アセビ(馬酔木)」は、ツツジ科アセビ属の常緑低木。東北南部以南の本州、四国、九州の山地に分布している。花期は3~5月で、葉腋から花序を出し、垂れ下がった花序に壺形の白色の花を多数付ける。

 

葉には毒があり、食べた馬が酔ったようにフラフラになってしまうことが名前の由来。かつては煎汁を殺虫剤として使用していたという。東大寺のある奈良公園一帯にアセビが多く繁茂しているのは、食いしん坊の鹿でさえ食べないからだとか。

(安藤 伸良)

 

 

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