高卒で社会人クラブ 異例の進路
若くして国内外で強さを発揮するオールラウンダー。さらに強くなるため、常識にとらわれない道を選んだ。
北園は3歳から体操を始め、多くの五輪出場選手を輩出している中高一貫校の名門、清風学園に入学。18年第3回ユース五輪では、個人総合、ゆか、つり輪、平行棒、鉄棒で優勝。史上初の5冠を達成した。また19年高校総体では、当時高校2年生ながら個人総合、ゆか、平行棒、鉄棒の4冠。東京五輪を含めて、将来の活躍が期待される選手だ。
21年4月、高校卒業後に社会人の徳洲会体操クラブに所属する。男子の体操選手は大学進学が一般的だが、高校を卒業と同時に直接、社会人クラブ入りという異例の挑戦について「人とは違うチャレンジをすることに不安もあったが、何が一番良いのかをたくさん悩んで決めた」と話した。
北園が門を叩いた徳洲会は、04年アテネ五輪で団体金メダルに輝いた米田功が監督を務めている。かつては、米田、さらには水鳥寿思氏らを擁し、03年から全日本選手権の団体で5連覇を果たした。名門クラブへの所属の決め手は「体操を続けていく上で、一番体操に専念できる環境」と話し、「全てが魅力的で、ここで強くなりたい」と意気込む。
五輪に向けては「各種目1つずつ入れたい技がある」と話し、中でも床のG難度リ・ジョンソンを取り入れたいという。
高校最後の体操生活
高校3年生、最後の1年は予想もしなかった新型コロナウイルスの影響に見舞われた。最後の高校総体は中止。中止が決まった時は「悲しくて、残念」と思っていたが、「前を向いてやるしかない」と目標として常に見据えていた東京五輪に向けて気持ちを切り替えた。
自粛期間中、1カ月ほど練習できない時期があったという。「体操からこれだけ離れたのは初めて」と振り返り、体が以前の状態に戻り切らない時期もあったが、今は「万全な状態で動けている」と調子の良さをアピール。家では他のアスリートの動画を参考に自分自身を見つめ直す時間も作った。ボクシング・井上尚弥の動画では自分を追い込んだトレーニングを目の当たりにし、「自分もがむしゃらにやってみたいと思った」と刺激を受けた。
米田監督「素直な吸収力が技術を産む」
徳洲会体操クラブの米田監督は「クラブとして世界で活躍する選手を迎え入れることができ嬉しく思っている」と、次世代を担う若い力を歓迎。北園の強みについて「自分の夢に向かいぶれず前に進む力、素直な吸収力が技術を産んでいる」と評価した。
教え子の決断について清風高体操競技部の梅本英貴監督は「徳洲会体操クラブに所属するという決断は強い気持ちがないとできないと思う。北園選手の自身の夢への強さを感じた」と期待を込める。続けて、「体操だけではなく、社会に出て色々と経験を積み、人間として成長し、強さを身につけてほしい。力がつけば必ず世界で活躍できる選手になれる」とエールを送った。
(mimiyori編集部)