五輪・体操個人総合2連覇の偉業を達成した選手は、世界に4人しかいない。
1968年メキシコシティー五輪で、加藤澤男は個人総合とゆかで金メダルを獲得した。
団体でも金メダルに貢献した加藤は、以降五輪に3大会連続で出場、計8個の金メダルを獲得した。これは日本人最多で、今も破られることのない大記録だ。
金メダルの数だけ、超人たちのドラマがある。
歴史上4人しかいない最強キング 5人目は?
5人目に輝くのは橋本大輝なのだろうか。
五輪という大舞台、それも総合力を競う体操・個人総合で、2連覇を果たしたキング・オブ・キングは、世界に4人しかいない。
1908~12年のアルベルト・ブラグリア(イタリア)、1952~56年のビクトル・チュカリン(当時ソビエト連邦)、そして1968~72年の加藤澤男と、2012~16年の内村航平だ。4人のうち2人が日本人。それも、技も全体のレベルも高度化していく中で、偉業を成し遂げた。
となると、どうしても期待せずにはいられないのが、東京2020オリンピックで金メダルを獲得した橋本大輝選手の連覇だ。加藤・内村に次ぐ5人目のキングとなるのか。3年後が待ち遠しい。
現役大学生 教育実習と五輪前練習を両立
橋本と同じく、当時加藤は現役大学生として、68年メキシコシティー五輪に出場した。
東京教育大(現・筑波大)で、講義や実習と練習を両立し、文武を極めた。そのかいあって、67年全日本学生選手権では個人総合で優勝。メキシコシティー大会前は、教育実習が重なるなど多忙を極めたが、練習の手は抜かなかった。
ゆかで逆転勝利!72年個人総合2連覇に続く
迎えた68年メキシコシティー五輪本番。
既定演技を終えて、トップと0.40差の3位。ソ連のボロニン、日本の中山彰規を追う展開だった。自由演技に入ると、つり輪・平行棒・鉄棒で高得点を出し、中山を抜いた。5種目終了時点で1位のボロニンとの差は0.35。
勝負の最終種目は、得意のゆか運動だった。ウルトラCの後方屈伸宙返り1回ひねりを織り交ぜた演技をノーミスで披露し、最後は後方回転からの伸身1回ひねりで終えた。
得点は9.90。ソ連の主審が採点に難色を示したため、5分ほどの待ち時間を経ての得点発表だった。対するボロニンは、あん馬でミスを連発し、9.50点留まり。
加藤がアキレス腱を痛めながらも、0.35差をひっくり返しての逆転勝利となった。
「あと2、3回勝てなければ、本当にボロニンより強いとは思いません」
3つの金メダルを獲得しても満足しない姿勢こそ、連覇をたぐり寄せる強さとなる。
(mimiyori編集部)