小学生から英才教育を受ける「サンボ70」
ロシアの「サンボ70」は、1970年9月28日に、当時ソビエト連邦のスポーツの専門家David Lvovich Rudmanによって設立された。公立のスポーツ専門学校で、教育センターが併設された施設はモスクワにあり、ロシア最大のスポーツ強化拠点となっている。
日本でいえば小学生以上が対象。トレーニングだけでなく、勉強の教育も併行することが最大の特徴となっている。よって、コーチやトレーナーだけでなく、勉強を教える教師もいる。モスクワだけで1100人以上の子どもが教育を受けることが可能。小学校にあたる1~4学年は、ロシア発祥のサンボや柔道などの格闘技と水泳の選手が通い、中学校、高校に当たる5~11学年はフィギュアスケート、体操などの選手も加わる。
倍率5倍の狭き門
栄養士が献立を作る朝、昼食を含め、学費は無料。毎年75人の入学枠は5倍という狭き門で、縄跳びやランニング、柔軟性のテストを行い、校長やコーチらが将来性を判断して選考するという。小学校では午前中にロシア語や算数などの授業を受け、午後は希望に応じたクラブ活動になる。トレーニングのほか、視野を広げるため地理や科学を学び、愛国心を養うクラブも用意される。
すでに金メダリスト97人以上、銀メダリスト19人以上を輩出。これまでに2万5000人以上が卒業した。卒業生はロシア各地に点在する国立体育大などに入り、さらなるトレーニングを積む。
ザギトワの母校
指導対象の競技は、陸上、サッカー、体操、フィギュアスケートなど夏冬合わせた26競技。相撲や柔道、ロシアの国技ともいわれる「サンボ」やキックボクシングなど、格闘技も多い。五輪でメダル獲得した主な在校生やOB、OGには、アリーナ・ザギトワ(18年平昌フィギュアスケート金)、アレクサンドル・ミハイリン(12年ロンドン柔道100キロ超級銀)、ユリア・リプニツカヤ(14年ソチフィギュアスケート金)らがいる。
「パペンダル」はオリパラ共有施設
オランダのアーネムにある「パペンダル」と呼ばれるトレーニングセンターは、オリンピック、パラリンピック競技の共有施設。1971年に、ベアトリクス王女の号令のもと、当初は五輪のハイパフォーマンスセンターとして発足した。
120人収容のレストラン、合宿所を完備し、大体育館、芝生のグラウンド、陸上など必要な施設を取りそろえている。後年、ジュニア世代のための学校も併設。2009年からは国の最高峰施設として位置づけられている(13年から民間運営に移行)。連日、約400人のオリパラアスリートが利用する。
80年アーネム大会のパラ開催地
1980年にはオランダでパラリンピックのアーネム大会が行われ、一部の試合がパペンダルで行われた。そのこともあり、同施設内では、車いすバスケや、水泳、車いすテニス、ボッチャ、ローイングなどパラ競技各種の練習や試合が可能。仮に、強化対象競技でなくても利用できるという。
最近10年で、ハイレベルな宿泊施設や栄養学に基づいた食事に加え、リカバリー施設、医療センター、ミーティングルーム、トレーニング施設、陸上競技場、サッカー場、大人数が練習できるウエートトレーニングルームなどハード面がより充実した。ソフト面でも五輪代表を指導した経験を持つコーチが在籍している。
海外選手にも門戸開放
12年ロンドン五輪の陸上男子100メートル準決勝で、9秒91を記録したオランダの第1人者チュランディ・マルティナは、パペンダルを拠点に練習した。同施設は、オランダの選手のみならず、海外選手にも門戸を開けているところ大きな特徴。しかし、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で閉鎖していて、再開の日が待たれている。
(mimiyori編集部)