【野球】東北楽天ゴールデンイーグルスの未来型取り組み~日本一のサステナブル・スタジアム「楽天生命パーク宮城」を歩く

球場正面入り口に飾られていた「Rakuten DAY」のお知らせ(撮影:いいの けい)

「Go Green Together」――

杜の都、宮城県仙台市の楽天生命パーク宮城がサステナブルな取り組みを行っている。その内容を発信する「Rakuten DAY」と題されたイベントが2022年6月12日、同球場で開催された。

セ・パ交流戦の東北楽天ゴールデンイーグルスー読売ジャイアンツの試合に合わせ、「スポーツの未来を共に創ろう」のスローガンのもと、パラスポーツのブラインドサッカー体験などの催し物を実施したもの。多くのファンにサステナブルな取り組みと接する機会が提供された。

また、試合は楽天が9-2で巨人に大勝し、交流戦最終戦を白星で飾った。

 

 

 

ビールカップ・ストロー・石巻こけしの共通点

サステナブル・スタジアムの意義を説明(撮影:いいの けい)

「日本一のサステナブル・スタジアムを目指します」

2022年4月22日、1997年の設立から25周年を迎える楽天は楽天生命パークについて、そう宣言した。25年という節目に、地球環境を考えて行動する「アースデイ」の4月22日を選んだという。

「スポーツの未来を共に創ろう。 A BETTER FUTURE TOGETHER」を合言葉に、より良い未来へ向けて、楽天グループは垣根を超えた社会貢献活動に取り組んでいる。

 

楽天球団が掲げる3つのテーマは「環境」「社会」、そして「地域」だ。

「環境」についての取り組みは多岐にわたる。22年4月1日から、楽天は事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換。21年度比で約90%のCO2削減が見込まれている。特に、球団のスポーツ施設については、東北6県および新潟県での水力発電が活用されている。

 

バットを使った石巻こけし(写真:報道資料より)

球場でのリサイクル活動もバラエティーに富む。

ビールカップはリサイクルペットを約50%使用し、ストローはバイオマス25%配合仕様でプラスチック削減を実現した。

試合中に折れたバットは、宮城県石巻市の民芸品「石巻こけし」で再生して地域産業活性化を促進、選手の写真ラッピングが目を引く飲料水「イーグルスウォーター」は再生ペットボトルに、ガチャガチャカプセルをバイオカプセルにリニューアルすることで、ファンと共にCO2やプラスチックごみ削減を目指す。

 

ほかにも、石灰石配合ゴミ袋への切り替えや、ごみの肥料化、レジ袋の環境対応素材使用比率アップなど、実に多種多様だ。

これらは、楽天が球団創設の05年以来、「エコスタジアム」として既に取り組んできた内容と重なる。

 

試合開始前の午前中は土砂降りの雨だったが、試合は無事開催された
(撮影:いいの けい)

「社会」面では、今から仕掛けていくという人権課題について。

特に、7月7~9日実施予定のイベント「イーグルスフェスティバル」では、福祉を起点に新たな文化を創造する会社「ヘラルボニー」とコラボし、障がいのある作家が描いたアート作品を展示。球場では今後も、バリアフリー化や車いすの寄付などの福祉活動も継続していく。

 

「地域」については、22年はゴールドマン・サックス証券株式会社と共同で、貧困に苦しむ子どもたちへのスポーツ機会創出を目指していく。

「する」機会だけでなく「みる」機会の提供も実施し、経済的な視点からも、〝サステナブル球場〟としての側面を磨いていく方針だ。

 

野球場でサッカー?

ブラインドサッカーの選手と楽天コーチ陣がブラインドサッカー(撮影:いいの けい)

野球場でサッカー?

楽天イーグルスアカデミーの岩﨑達郎、戸村健次両コーチが、パラスポーツの人気競技「ブラインドサッカー」に挑戦した。

案内は日本ブラインドサッカー協会の山川聖立選手と内田佳選手、宮島大輔氏。ブラインドサッカーは未経験だという両コーチに、内田選手は「見えている人と見えていない人がそれぞれ協力してプレーできる」と楽しみ方を伝授した。

 

声を聞いてゴールの位置を確認する戸村コーチ(撮影:いいの けい)

宮島氏は両コーチに「準備体操はブラインドサッカーの特色を生かした準備体操を」と、アイマスクを着けた状態でのウオームアップをリクエスト。戸惑う2人だったが、「投手がやるストレッチで、右腕を左に伸ばす」など動きを言語化することで、ブラインドでの準備体操をこなした。

 

いざ、ゴール練習に挑戦。先陣を切った岩﨑コーチは1本目を成功させ、2本目も「360度回ってから」という課題をクリア、連続でゴールを決めた。続く戸村コーチは、1本目で失敗。2本目はギリギリ枠内に収めてみせた。

 

体験を終えた両コーチは、「ここにあると思ったらない」「音は聞こえるのに、そこにない。マジでむずいです」と驚いた。宮島氏は「コロナの中で、コミニュケーションが分断された。ブラインドサッカーを通じて課題が解決できれば」とブラインドサッカーの大きな可能性について触れていた。

 

 ユニホームの「アップサイクル」~その行方は?

実際にスタジアム周辺に置かれた「ユニホーム アップサイクル ボックス」
(撮影:いいの けい)

ブラインドサッカーと並んで、ウリの展示がもう一つ。緑色のテントに覆われたブースで、サステナブルな取り組みの数々が紹介されていた。

「ユニホーム アップサイクル ボックス」はその名の通り、ユニホームを回収する。たとえば、球場で応援する時に着るユニホームを買い替えた時などに、このボックスへ入れるもの。

ただのリサイクルではない。

集めたユニホームはチームグッズなどに「アップグレード」し、よりサステナブルな用途に生かそうとしている。実際に、この日も多くの楽天ユニホームが回収されていた。えんじ色のユニフォームが、再びえんじ色のグッズになってファンの手元に戻ってくるというステキなサイクルになっている。

 

楽天の勝利も一つの「未来」のかたち?(撮影:いいの けい)

アップサイクル ボックスの右手には、来場者参加型のブースが並んでいた。

まずは「MY BETTER FUTURE IS…」と題されたホワイトボード。楽天イーグルスやヴィッセル神戸の選手たちが「より良い未来」について記しており、その下には、ファンが自分の思う未来を書き足すことができる。

朝は真っ白だったボードに、試合開始後には色とりどりの「みんな笑顔!」「マスクなしで笑い合える世界」といった「未来」が書き込まれていた。

 

生憎の雨でもくるくる回す子供は健在(撮影:いいの けい)

さらに右手には、「OUR BETTER FUTURE IS…」と題し、「スポーツのより良い未来」を投票するパネルを設置。「GREEN」「LGBTQ+」「GENDER」「PEOPLE WITH DISABILITIES」「CROSS CULTURE」「FAMILY」の6観点から考える「スポーツのより良い未来」が提案されている。その向かいには、楽天が既に取り組んでいる活動について回転式パネルで紹介。楽天の持つ積極的な姿勢が、数字で表現されたボードを展示した。

 

スマホから選手がピッチング

スマホでやってみると、岸孝之投手が出現
(写真:実演したゲームコンテンツのスクリーンショット)

ファンならうれしい、楽天ならではのコンテンツも拡充している。

スマートホン越しにスタジアム看板の選手をタッチすると、楽天投手陣がAR空間(拡張空間)上に浮かび上がり、メッセージ入りのボールを投じてくる。ゲート入場に並ぶ待ち時間、気軽にスマホでできるこのゲームは近々、一般公開される予定になっている。ちなみに、ごくまれに楽天カードマンが出現するとか。

 

気分はプリクラ感覚?(撮影:いいの けい)

「LGBTQ+」について理解を深めるフォトスポットも設置されていた。アウティングなど、LGBTQ+の人達が直面する課題を、マンガで親しみやすく学べるパネルのほか、LGBTQ+の象徴であるレインボーフラッグをイメージした作品の前で、「お買いものパンダ」と写真撮影できるフォトスポットも備えている。

写真はその場で確認することが可能。試合開始後に改めて向かった際も、陽気なお姉さんと筋肉隆々なお兄さんが出迎えてくれた。

 

エコステーションにはボランティアスタッフがつく(撮影:いいの けい)

今でこそ球場でのごみの分別は常識だが、「エコステーション」の設置は楽天イーグルスが初だという。球団創設当初から設置してきた「エコステーション」には、ボランティア・スタッフが常駐し、ごみの分別についての啓蒙活動を行う。

 

 

始球式はパラサイクリングの藤井美穂選手

力強い投球を見せた藤井美穂選手 (©︎Rakuten Eagles)

午後1時開始の読売ジャイアンツ戦では、始球式にパラサイクリングの藤井美穂選手が登場した。楽天ソシオビジネス所属で、東京2020パラリンピック自転車の500メートルタイムトライアルで7位入賞を果たしている。ワインドアップで思いきりのいい投球を終えると、ニコッと笑顔を浮かべて礼をした。

 

球団の取り組みに寄せて、各選手が「より良い未来 とは」という設問にコメントを発表。この日の先発・則本昂大投手は「どんな環境に生まれても挑戦できる未来へ」と題し、自身が「やりたいことをやらせてもらえた」と感じるからこそ、その環境や機会に恵まれていない人たち、特に子どもたちに思いをめぐらせた。

 

6月12日終了時点で、楽天はパ・リーグ首位を走る。「日本一のサステナブル・スタジアム」の実現はもちろん、13年以来9年ぶりの「日本一」も目指す位置にいる。

チームづくりと社会貢献の両立を実現。楽天イーグルスはそれが可能な球団ということを「Rakuten DAY」は示していた。

(いいの けい=mimiyori編集部)

 

 

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