【連載「生きる理由」78】柔道金メダリスト・内柴正人氏 「斉藤仁先生から学んだこと」③~技術は人生を変える

柔道を指導する時は、キルギス共和国総監督時代のゼッケンをつけた柔道衣を着用している(撮影:丸井 乙生)

2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。

これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「斉藤仁先生から学んだこと」③。

キルギス共和国から教え子が職業研修と柔道の修業を兼ね、3カ月間来日中。
2年半ぶりに再会した彼ら、そして帰国後に教えを求めてきた若者、子どもたちが一緒に練習している。
その姿を見ながら、内柴氏の胸に去来するものとは。

 

また、8月27日(土)午後2時~、チャリティー柔道セミナーを大阪で初開催することが決まった(詳細は下記)。

 

 

日々格闘

指導者になる必要もなかったけれど、持たされた大きな立場に責任を感じて、人に頭を下げる仕事を選んだこと。
そして、大失敗したこと。
大失敗したことで、いろんな人に迷惑を掛けた反省。

いろいろあるけれど、
昔と変わらず、間違いが正解か分からない不安と日々格闘しながら、僕は進化している。

 

キルギスから後を追ってきた教え子たち

3カ月間来日中の〝キルギス・トリオ〟。大学で観光について学んでおり、その職業訓練を兼ねて内柴氏のもとに再び入門(撮影:丸井 乙生)

特に今、柔道をしていないのにどんどん柔道への理解が深まる。
それはキルギス共和国から2年半前までの教え子が、職業訓練で僕の店舗に来てくれたからだろう。

練習環境はない。
できても打ち込みばかり。
トレーニングばかりで、仕事メーンの条件。

選手たちは、僕が日本で置かれている立場をかなり詳しく知っておきながら、それでも来日してきた。

 

「技術は人生を変える」

練習では毎日のように階段トレーニング(写真:本人提供)

だったら、本気出してやろうではないか。
技術は人生を変える。
心も変わる。
一番は優しくなれる。

時間をつくり、公営の体育館で一般参加の170円を払えば誰でも参加できる練習会を週2回。
残りは店の近くの階段と、
漁師の友だちからもらった、めちゃ長いロープでのトレーニング、
店のロビーの一角でやる技術指導。

 

ここから何が生まれるか分からないけれど。

 

 僕を内柴だと分かって来てくれる選手には

教えるからには丁寧に伝える(撮影:丸井 乙生)

僕を内柴だと分かっていて来てくれる選手には、外国人でも、遠くに住んでいたとしても、できることはやろうと思う。
もともと、大勢とはつるめない性格なのだから。

来てくれる悩める選手に感謝して。
よくぞここへ来たと、斉藤仁先生からいくらかいただいた柔道を教えさせてもらおうと思っている。

もちろん、バイトもさせるけどね。

 

 新たな〝入門ファミリー〟現る

8月27日、大阪でチャリティー柔道セミナーを初開催(写真:事務局提供)

キルギスの彼らとは2年半前に一度は関係を終えているのだけど、こうして期間限定の柔道クラブごっこをして、真剣に遊んでいる。

さて、
キルギスの3選手が来日して活動する費用を職業訓練とはいえ、僕が勤務する会社から出してもらうのは申し訳なく、柔道のセミナーで協力金が集まればいいなあ。
そんな思いで、6月のチャリティーセミナーを開きました。8月27日には大阪で第3回を開く予定です。

そんな中、ある柔道一家の選手たちが僕のアドバイスを懸命に習得しようとしてくれています。

(内柴 正人=この項つづく)

 

◆8月27日(土)柔道セミナーを大阪で初開催

キルギス共和国から職業研修で来日している大学生3人の柔道活動費を支援するために、6月に愛知県、東京都でチャリティー柔道セミナーを開催した。

今回は大阪で初開催、2部制で行う。。

・日時:8月27日(土)1部=午後2時30分~午後4時30分(セミナー)、2部=午後5~7時(練習会)。受付は午後2時より。

・場所:エディオンアリーナ大阪(大阪府立体育館)=大阪市浪速区難波中3-4-36

・参加費:1部(セミナー)のみ参加=事前振込5000円(15歳以下は3000円)、当日支払い6000円(15歳以下は4000円)、1、2部ともに参加=事前振込8000円(15歳以下は5000円)、当日支払い9000円(15歳以下は6000円)。

・申し込み:piiita6u6@gmail.comまで。参加希望の方はメールにて、お名前、電話番号、事前振込、当日支払い、どちらのご希望かを記載してご連絡ください(事務局より)。

 

◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信開始

内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に週1回開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。

より詳しい内容について、メンバーシップ配信も開始した。

詳細は下記YouTubeのコミュニティ欄へ。

 

www.youtube.com

 

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うちしば・まさと

1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。

 

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