【連載「生きる理由」95】柔道金メダリスト・内柴正人氏 「自分がやりたいことは何かを考えた話」

2022年8月、柔道着をまとった内柴正人氏(撮影:丸井 乙生)

2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。

これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「自分がやりたいこと は何かを考えた話」。

頼まれると断れない性分の内柴氏は、時に「自分がやりたいこと」が分からなくなるのだという。
自問自答の心のうちを明かした。

 

 

 

求められると断れない

教えるとなったら、真剣に伝える(撮影:丸井 乙生)

僕のやりたいこと とはなんだろう。

柔道場を持っているわけでもなく、試合に出てトップを狙う夢があるわけでもない。

本音は、何にもしたくない。

こんな僕。

ただ、性格的に求められると断れない部分は強く。
誘われると断れない。

やっぱり柔道なのかもしれない。

 

公私ともに一蓮托生の夫人

趣味の金魚のことを考えているうちに、仕事について思いをはせた(写真:本人提供)

僕の仕事を支える一人
僕の妻、
彼女は結婚する時に
「俺はもう一生働かない。それでも良ければ結婚しよう」
という訳の分からないプロポーズに応え。

柔道整復師の免許を取り、
免許を取ったその晩に入籍をする。

柔術を学ぼうと神奈川に移り住み、柔術の先生からキルギス共和国の柔道を指導してこいとの指令により、
キルギスへ一緒に旅立ち。

今、なぜか風呂屋と一緒になってしまっている。

厨房へ入り、
昼のフロントにも入り
酔っ払った人が昼から店のロビーでふらついているのにも対応している。

「一蓮托生」というのだろうか。

 

本来こだわってやりたいことは

金魚だけでなくメダカもいる(写真:本人提供)

今、風呂屋。
このままでいいのか。

金魚、本当にやりたいことなのか。

柔道、
妻はここ最近、地域の子どもたち数名に柔道を教え始めた。


教えている柔道は
僕の柔道スタイルなのだ。

本来、こだわってやりたいこととは何だろう。

彼女が信じる「僕の柔道」を僕が道着を着て、ともにやることが、もしかしたらその、それかもしれない。

 

自分しかできないこと とは何か

リラックスした表情の内柴氏(撮影:丸井 乙生)

「その、それ」とは
一体何なのだろう。

柔道にこだわり、勝ちきる人生が難しいのか
当たり前に働くことが難しいのか。

子どもの頃、
勉強をしてみたことがあるんです。
当たり前に勉強すると、当たり前に勉強ができることに気づいた日がある。

これは俺でなくてもいい。

その感覚と何か似ている。
はい。
(内柴 正人=この項おわり)

 

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うちしば・まさと

1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。

 

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