スポーツタイプの電動アシスト自転車、いわゆる「e-bike(イーバイク)」がAI(人工知能)搭載でさらなる進化を見せている。4月16、17日に東京ビッグサイト(江東区)で開催された「CYCLE MODE TOKYO 2023(サイクルモード東京2023)」では、e-bike新時代を告げるニューモデルがいくつか展示された。
AIがアシスト力とギアチェンジをオート制御
マウンテンバイクやロードバイクやのようなルックスながら、電動アシストのパワーで坂道や長距離もスイスイ進め、体力に自信がない人でも本格的なサイクリングが楽しめる「e-bike」。数十万する値段から日本ではまだそれほど見かけないが、ヨーロッパではコロナ禍での移動手段として広まり、特にドイツでは市場の3~4割を占めるとも言われている。
近年のサイクルモード東京は新しい乗り物でもあるe-bikeがほぼ主役の座を奪っているとも言えるが、そんな中で最近話題のAIを搭載した注目モデルが披露された。
台湾発、e-bikeのパイオニア的ブランドのひとつであるBESV(ベスヴィー)はAI機能を搭載した「SMALO(スマーロ)」ブランドの2車種「LX2」「PX2」を発表。「SMALO」とは、「smart」(英語で賢い)と「velo」(フランス語で自転車)を合わせた造語だそうだ。
クロスバイクタイプの「LX2」はオートマチック7段変速機を装備し、常に最適なアシスト出力と、最適なギア比をAIが自動で判断し選択する「AI Driving System」が搭載されている。
この機能がいいなと思うのは、e-bikeにはアシスト力を強・中・弱などと切り替えるボタンと変速機の両方がついているものが多く、上り坂に差し掛かるとギアを軽くすべきか、アシスト力を強にすべきか、迷うこともある。まあ、バッテリーの減りを考えるとギアを先に変えた方がいいのかもしれないが、このシステムではAIが勝手にアシスト力やギア比を調整してくれるので、余計なことは考えなくていいというわけだ。
(撮影:光石 達哉)
その他にも、Bluetoothで専用アプリと接続して各種設定やカスタムが可能で、バッテリー残量などもアプリで確認できる。中でも防犯機能が充実し、(1)「GPS」で自転車の正確な所在地を確認、(2)「盗難防止アラーム」が自転車の振動・移動など動きを感知して鳴る、(3)アプリやPINコードで開錠できる電子ロック「E-Lock」、などがある。
ホンダがAI搭載の電動アシストユニットを開発
(撮影:光石 達哉)
自動車メーカーのホンダは、20年ほど前まで電動アシスト自転車を販売していたが、このたび既製のスポーツ自転車に取り付ける電動アシストユニットとそれに連動するスマートフォンアプリ「SmaChari(スマチャリ)」を新たに開発した。
スマチャリのAI機能は、個人に合わせたアシスト力の調整。センサーで集めたデータから乗り手の意思、走行状況を判断し、モーター出力を制御する機能や、きめ細やかなアシスト出力の調整機能を搭載しているという。アシストが効きすぎて、おっとっととなるような状況が避けられるということだろう。
このスマチャリは、スマホアプリとセットでひとつのシステムとなっており、アプリ上でマップ、速度、走行距離、アシスト出力、バッテリー残量、消費カロリーなどを表示するとともに、走行データとして記録・管理する走行ログ機能を搭載。スマチャリユーザー間での位置共有機能もあり、仲間の走行位置の確認や外出した家族の見守りなどもできるという。こちらもスマホをカギとして使えるし、異常を検知する機能もあるという。
なお、後付けできるユニットとはいえ、自分の自転車に自分で取り付けることはできず、販売店などであらかじめ取り付けた完成車として販売されることになる。現時点では、コーダーブルームのクロスバイクにスマチャリユニットを取り付けた「RAIL ACTIVE-e」が、全国展開するスポーツ自転車店「ワイズロード」から今年9月に発売される。
ユニットとバッテリーの重量が約5㎏と軽いのも魅力で、上記の完成車も車体重量は約15kgに抑えられ、価格も22万円(税込)と比較的リーズナブルだ。もともとの自転車の乗り味や性能、スタイルをほぼそのまま活かせるのも魅力だという。
中国ブランド発のe-bikeも登場
中国のブランド、上海金輪はスマートウォッチの心拍計とe-bikeを連携させることで、乗り手の心拍数に応じてアシスト力を調整するAI機能を搭載している。例えば、心拍数が低い時は乗り手が体力的に余裕があるとAIが判断してアシスト力を弱め、逆に心拍数が高い時はアシスト力を強くするという仕組みのようだ。
この機能を搭載したe-bikeは、ロードタイプの「SPIRIT」、グラベルロードタイプの「KADER」、クロスバイクタイプの「NOVA-X」の3車種ある。e-bikeのほとんどがアルミフレームなのに対し、軽量で剛性の高いカーボンフレームを採用しているのも興味深い。残念ながら国内発売未定だ。
さすがにどんな質問でも答えてくれるようなAIではまだないが、最新テクノロジーが好きな人にとっては魅力的な乗り物として受け入れられてくるかもしれない。
(光石 達哉)