【経営哲学】排泄予知デバイス開発の実験で”生みの苦しみ” 「Triple W Japan」代表取締役・中西敦士氏の珍アイデアとは③

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排泄予知デバイス「D Free」誕生までの間、尿意に関する実験に悪戦苦闘

(写真はイメージ)

人生100年時代、介護業界の人手不足が深刻化しているというが、いまだ多くの人がそれを他人事に感じているだろう。そんな人に知ってほしい。

一般的な介護施設において、介護職員は8時間の勤務時間のうち約3時間を排泄介助に当てているということを。

 

そんな介護職員の負担を減らす救世主が現れた。

排泄予知デバイス、その名も「D Free」だ。

D Freeとは、超音波センサーによって膀胱の変化を捉え、排泄のタイミングを予測し、スマホやタブレットに知らせてくれるというIoTウェアラブルデバイスだ。

開発したのは、ベンチャー企業「トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社」代表取締役・中西敦士だ。

中西の“失禁”の過去が、オムツ(DIAPER)から自由になる世界を創る!

 

 

開発スタート!未知の応用技術に悪戦苦闘

人生で最も恥ずかしい「おもらし」を経験した後、中西はバークレーで知り合った友人・九頭龍雄一郎と連日議論を重ねた。

彼はハードウェアエンジニアでIoTのプロフェッショナルである。

そして14年6月、「排泄のタイミングを予知するデバイス」の着想を得て、9月には「D Free」の開発を本格的にスタート、15年には米サンフランシスコにて「Triple W」社を起業した。

 

そこで注目したのは、コンパクトで体に装着しても無害な「超音波ユニット」だった。

日本にいる友人が、超音波装置を貸してくれる会社を見つけてくれたため、アドバイスをもらいながら開発を進め、東北大学の教授にも超音波機器のアドバイザーとして適宜相談した。

もともと、超音波端子は小指の先くらいのサイズととても小さく、あとは電池とマイコン、Bluetoothがあれば、機械自体は簡単に作れる。

 

しかし、超音波での排泄物を認識するシステムは、どの企業もやっていない未知の応用技術だったため、その効果は自分たちで実証するしかなかった。

 

ソーセージに数珠 さらには金属棒⁉

実験台となってくれたのは、中西の“後輩の後輩(中略)の友達”の若い男性だった。遠い。

千里の道も一歩から。その実験とは、超音波センサーは腸内の”ブツ”を認識できるのかを確認するものだった。

そこで率直に、肛門にソーセージ、数珠、金属棒などを入れてもらい、それらを超音波センサーでチェック。

さらに、今度は本物の”ブツ”を効率よくためるために、三度の食事のほかにオヤツとして牛丼を食べてもらったり、尿のケースを調査すべく、毎日3リットルのコーヒーを飲んでもらったりもした。

 

実験を重ねる上で最も苦労した点は、実験台の男性が便秘気味で、基本的に大便を「一日一善」しか排出できないこと。

催促しながらされながらを何度も繰り返し、男性は排泄するたびに拍手を浴びた。排泄したことで拍手されたのは、おそらく赤ちゃんの時以来だろう。

 

 

文系の中西を救った友人と仲間たち

実験を何度も繰り返し、排泄物の予知ができることが分かると、今度はハードウェアの開発チームを作っていった。

 

そこで重要な役割を果たしたのが、中学高校時代の友人で、理系の正森良輔だった。

現在トリプル・ダブリュー・ジャパンの技術部長を務める正森は、大阪大の大学院を卒業後、オリンパスで内視鏡の開発に従事していた。

その後青年海外協力隊でパプアニューギニアに渡った後、英国サセックス大学国際教育開発学修士課程修了し帰国後、中西の誘いで入社したという冒険心旺盛な研究家だ。 

ただ同級生だから協力したわけではない。このテーマは特許や文献を調べても類似のものがまったく出て来ておらず、専門家も答えを出せていないのだと興味を持ったからだ。 

最初の半年間、開発チームは無給だったが、それでも中西の人望は厚く、集まった有能なスタッフが積極的に開発や資金集めをした。合コンで名刺交換しただけの弁理士に特許出願をお願いしたこともある。人脈で集めたチームで難題に取り組んだのだ。

 

 (つづく=五島由紀子 mimiyori編集部)

 

 

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