【連載「生きる理由」132】柔道金メダリスト・内柴正人氏 「QUINTETに出場する話」①~出稽古の旅

出稽古先の広島にて(提供:EDGE&AXIS)

2004年アテネ、08年北京五輪柔道男子66キロ級を連覇した内柴正人氏は現在、熊本県内の温浴施設でマネジャーを務めている。18年からキルギス共和国の柔道総監督に就任し、19年秋に帰国した後は柔術と柔道の練習をしながら働く、いち社会人となった。

これまで、彼はどんな日々を過ごしてきたのか。内柴氏本人がつづる心象風景のコラム連載、今回は「QUINTETに出場する話」①。

9・10 QUINTET横浜アリーナ大会では、桜庭和志の長男・大世のプロデビュー戦の相手を務める。

出場を前に、練習に励む日々をつづった。

 

 

日帰りで東京まで出稽古へ

熊本・八代市の”内柴道場”こと「EDGE&AXIS」では、トレーニングスペースが超充実してきた(提供:EDGE&AXIS)

おはようございます。
きょうは朝から風呂の湯を確認して、飛行機に乗ったところです。

9月10日に行われるQUINTETへ向けての練習。

熊本から神奈川へ
先輩の道場・小見川道場です。

日帰りで
7時35分の飛行機に乗り
19時10分には帰りの飛行機の中へ。

前回、前々回も同じように大会の少し前から出稽古へ行かせてもらっていました。
この時は自腹。
今回は支援してもらっての遠征です。

ありがたく申し訳ない。

その分、良い練習にするしかない。

 

「負ける練習」をする

もはやトレーニングジムなのではと思えるほど、「EDGE&AXIS」のトレーニング器具がそろっている(提供:EDGE&AXIS)

技術は中央にある。
これは柔道時代もそうでしょう。
何でも東京のほうが最先端なんです。


一瞬でも行ったほうがいい。
経験したがほういい。
習ったほういい。
やられに行っちまったほうがいい。

感覚。
これは多くの人と違うものだと思う。
僕は「負ける練習をする」から。


きのうも、
ある高校の選手に柔道を教えていたのだけど、
今持っている感覚を大切にしてるのか、抜けないのか、今、習っている技術をそのままできない人が多い。

 

内柴氏の柔道とは

EDGE&AXISの柔道衣(提供:EDGE&AXIS)

同じ名前の技。
例えば「小内刈り」は
普通は、相手の足を相手のつま先の向いているほうへ刈る、と習います。
僕の小内刈りは、相手の足を横に開いてあげて、重心をもらってから投げられる方向へコントロール。
手と足を円の動きでコントロール。

同じ技の名前。
でも、違う動き。

続いて「小外刈り」。
小外刈りは、自分の刈足に近いほうの相手の足を外側から刈る。
まあ、そんなふうに習うでしょう。

これはこう習うと、
刈ったほう、つまり相手を投げにくいほうに、
力がズレるほうへ体が流れます。
そして、刈る角度が決まらない。

僕の小外刈りは釣り手、引き手でまず投げたい方向へ振る。
軸足を踏み直す。
刈足を当てる。
振った相手の逆、引き手側、
刈るために当てた刈足の逆へ上半身を固定する。
押し込み方は当てている刈足の逆へ逆へ押し込み。
足は当てているだけ刈らない。

これには
クソめんどくさい手順がある。

 

独特の柔道理論

こんなもんを習わなくても、年々新しいチャンピオンは生まれるんです。

だから、僕に習う必要はない。

習う必要がないのだから
僕が教えるとなると、選手自身の感覚やクセは捨てなきゃ習えない。

習いに来ているんだからね。
ただ、力自慢、実力を試したいという人ならば、
そりゃ、東京へ行け。
東京のどこか強い大学や企業へ行けば済む話。

 

技術の最先端を拾いに行く

1人だけ、後輩に僕をやっつけようとカメラを持ってやって来てくれる後輩がいます。
「ドンマイ川端」ってヤツなんですけど。

彼は僕に習いに来ていないので、当たり前にガチの乱取りとなります。

おじさんとしては、限界の体力を振り絞り相手をさせてもらうのだけど

習わずに遊びに来てくれるほうが気は楽です。

セミナーやプライベートレッスンは基本、やりたくない。

技術の最先端は東京にほとんど落ちている。
これらを拾えない人が遠く、熊本のド田舎に習いに来る。

そして、僕は僕の練習をするために東京へ行く。
日帰りでも何かを拾いに行く。


(内柴 正人=この項つづく)

 

………………………………………………

◆内柴道場「EDGE&AXIS」公式HP

uchishiba-dojo.com

 

◆EDGE&AXIS 公式ショップ

umhy171911.base.shop

 

◆内柴正人氏による柔道指導の動画配信      

内柴氏が現在、熊本・八代市で小学生から大学生を対象に開催している練習会を中心に、指導内容を盛り込んだ動画配信を22年4月から開始している。
より詳しい内容について、メンバーシップ配信も開始した。
メンバーシップ配信では、今回の道場づくりについても動画をアップ中。
詳細は下記YouTubeのコミュニティ欄へ。

www.youtube.com

………………………………………………

うちしば・まさと

1978年6月17日、熊本県合志市出身。小3から柔道を始め、熊本・一宮中3年時に全国中学大会優勝。高3でインターハイ優勝。大学2年時の99年、嘉納治五郎杯東京国際大会では準決勝で野村忠宏を破って優勝。減量にも苦しんだことから03年に階級を66キロ級へ上げて2004年アテネ五輪は5試合すべて一本勝ちで金メダル獲得。08年北京は連覇した。10年秋引退表明。11年に教え子に乱暴したとして罪に問われ、上告するも棄却。17年9月出所。得意技は巴投げ。160センチ。18年に現在の夫人と再婚し、1男がいる。20年1月から現在の職場に勤務。

 

#MasatoUchishiba

 

mimi-yori.com

mimi-yori.com