企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。
つれづれなるままに、今回は「野菜の花と実」の前編を紹介する。
コロナ感染症の拡大が続いて外出を控え、自宅で気晴らしに草花や野菜を育てているご家庭もあるのではないだろうか。拙宅は庭が狭いため、毎年プランターで朝顔と野菜を育てている。自分で育て始めてから気付いたのだが、野菜の花には見逃すのが惜しいほど綺麗なものが多い。
花も実も美味のズッキーニ
「ズッキーニ」は、ウリ科カボチャ属の植物。濃い緑色の実の外見はキュウリに似ているが、カボチャの仲間に分類される。
ズッキーニの花は、雄花と雌花に分かれていて、黄色に大きく咲く。雌しべに雄しべの花粉がついて受粉することで実ができる。ズッキーニの実にはクセがないことから、炒めたり、焼いたり、煮たりと、さまざまな料理に使われている。
筆者は、英国に駐在したサラリーマン時代にズッキーニの花を初めて食べ、あまりのおいしさにすっかりファンになった。
「コルジェット・フラワー」と呼ばれ、花の中に具材(鶏のひき肉やエビのすり身など)を詰め、揚げる、もしくは炒めて調理される。
雄花の方が味は優れていると言われるが、雌花の子房が付いたものの料理も味は絶品。異国の味がどうしても忘れられず、都内の拙宅でも帰国後に数年間ズッキーニを育てて楽しんだ。
命短しオクラの花
「オクラ」は、アオイ科トロロアオイ属の植物。アフリカ北東部原産で、日本には明治初期に渡来した。全国的に普及する前から沖縄、鹿児島、伊豆諸島では「ネリ」という名前で呼ばれていた。
オクラの花は中心部が濃い紫色で、花弁はクリーム色。ピンクや黄色みの強いものもある。筆者が初めて見た時にはアオイ科の「タチアオイ」の花に似ていると感じた。こんなに美しくても花の命は短く、たった1日で落ちてしまう。
害虫に強い植物で、実もよくできるため自家菜園にはお勧めの野菜といえる。
ゴーヤの花は黄色くタネは赤い
「ゴーヤ」は、ウリ科ツルレイシ属のつる性植物で、別名は「ニガウリ」または「ツルレイシ」。原産地は熱帯アジアで、日本では沖縄などの南西諸島、南九州で主に栽培されている。
花期は7~9月で、黄色の5弁花。未熟な緑色の実を野菜として、「ゴーヤチャンプル」などの料理に利用される。
若い実は独特の苦みがあるが、完熟した実のタネを覆う果肉は赤いゼリー状になって甘くなる。
タネが未熟なうちは鳥に食べられないように苦みを含み、タネが成熟した後は、タネを運んでもらうため鳥の好きな赤色になり、タネの周りを甘くするという植物の戦略が興味深い。
(安藤 伸良)