【パラ陸上】日本選手権・初日~冬の女王が夏初出場へ希望つなぐ

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夏と冬両方のパラリンピック出場を目指す村岡桃佳(撮影:岡田剛)

パラ陸上の日本選手権は3月20日、東京・世田谷区の駒沢陸上競技場で開幕した。パラリンピック夏冬出場を目指す2018年平昌大会アルペンスキー女子金メダリストの村岡桃佳(トヨタ自動車)は、東京パラ内定獲得のボーダーライン上にいる100メートル(T54)で優勝。前週はアルペンスキーのアジア杯出場に出場しており、二刀流挑戦への決意を新たにした。男子では、400メートル(T52)などで代表内定を決めている佐藤友祈(モリサワ)が登場した。

 

 

村岡桃佳 陸上とアルペン1週間で切り替え

雪山から陸上トラックへ。二刀流の真骨頂だ。

村岡桃佳は3月9~13日にアルペンスキーのアジア杯(長野・菅平高原)に2季ぶりの冬季競技出場。6レースのうち5レースで優勝(1レース途中棄権)し、18年平昌で日本人史上最多となる1大会メダル5個を獲得した女王の貫録を示していた。そして同20日、今度は夏季大会出場を目指して競技用車いす「レーサー」に乗ってレーンに並んだ。

「タイトなスケジュールで体力面ではしんどさはあったが、気持ちの部分の切り替えは難しくなかった。陸上とアルペンは切り分けて考えているので」

久々の陸上競技だった。20年9月の日本選手権出場後、一旦アルペンスキーにシフト。今大会は、わずか1週間のうちに夏冬2競技をこなす過酷なスケジュールで臨んだ。100、400メートル(T54)で優勝したものの、東京大会出場を狙う100メートルのタイム自体は自己ベストに及ばない17秒33。スタートでレーサーを漕ぐ手が滑り、その焦りから後半のスピードが上げられなかった。

 

3月20日現在、100メートルでは東京パラの“内定番付”で6位(16秒34)。4月1日付ランキングで6位以内であれば、夏の挑戦権を獲得できる。今回着用したグローブは、本番を見据えて新しいものに交換したばかり。「使った時に手応えを感じたので変えてみた。慣れる時間があれば…」と前を向いた。 

4月もアルペンでアジア杯(11~15 日=長野)、陸上競技でジャパンパラ(24、25 日=高松)と短期間で二刀流出場を予定している。「内定が決まれば、アルペンが終わってからは陸上に集中する」。厳しい日程をこなしながら、日本女子では98年長野、04年アテネ大会で達成した土田和歌子以来史上2人目の夏冬出場へ希望をつなぐ。

 

佐藤友祈 プロ転向で新たなスタート

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男子400メートルに出場した佐藤友祈(撮影:岡田剛)

世界記録ホルダーがプロ転向後初戦に臨んだ。男子400メートル(T52)に出場した同種目世界記録保持者の佐藤友祈は、56秒23の大会タイ記録でフィニッシュ。「スタンドからの声援を受けて集中して走ることができた」と納得。記録について問われても「全然ダメっすね。また頑張ります」と早くも切り替えた。

2月1日のプロ転向から初めての大会。独立してからは、ナショナルトレーニングセンター(NTC)での練習、新たにハンドサイクルを使った練習や心拍数のデータを取るなど、トレーニングメニューにも変化が出てきた。

「順調にトレーニングができてきているので、このまま調整を続けたい」

プロ転向後からは積極的にSNSで発信を続けている。ファンから「大会へ応援に行きます」といったメッセージも届き、妻からは「せっかく見に来てくれるんだから0.01秒でも世界記録更新したら」と声を掛けられたという。

初出場した16年リオ大会では2種目で銀メダル。金メダルを狙う本番に向けて、今回記録は及ばなかったが「自分の経験値にプラスになった」と前向きに捉えた。

 

男子5000メートル 唐澤・和田のマッチレース

 

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最後まで競り合った唐澤剣也(左から2人目)と和田伸也(右から2人目、撮影:岡田剛)

視覚障がいの男子5000メートル(T11)では、同種目で代表内定の唐澤剣也(群馬社福事業団)が15分30秒59で優勝。“内定番付”で同種目1位・和田伸也(長瀬産業)との競り合いを制した。

序盤から唐澤が前に出て、和田がぴったりと後ろにつく展開。こう着した状態が続き、ラストスパート勝負で唐澤が和田を振り切った。

スタートから最後までレースを引っ張った。「やってきたことは間違っていなかったと証明できた」。冬場は1日20キロ、30キロの距離走に取り組んだ。苦しくなってきたところで、もう一段スパート。練習の成果を発揮し、初出場となる大舞台に向けてシーズン初戦で上々の走りを見せた。

2位の和田は「お互いけん制しすぎた。ラスト1周から300メートルで前に出ないといけなかった」と、スパートのタイミングを反省した。1500メートルではすでに内定しており、3大会連続出場は確定。本番で唐澤、そして強豪ケニア勢に立ち向かうため、本番までに攻めの走りを磨く。

 

南スーダン選手 感謝の快走

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特例で出場した南スーダンのクティヤン・マイケル・マチーク・ティン(撮影:岡田剛)

南スーダンのクティヤン・マイケル・マチーク・ティンが男子100m(T47)に出場した。

19年11月からホストタウンの群馬・前橋市で長期合宿中。新型コロナウイルス感染拡大の影響により国際大会への出場機会が失われている状況で、特例で大会出場が認められた。

先天性で右腕に障がいがあるが、パラ陸上の選手を一緒に走ったのは今回が初めてだという。「同じ障がいを持った日本のトップ選手と走れたことに喜びを感じている。サポートしてくださっている前橋の皆さんにも感謝している」

日本に来て、練習を通じて人とのつながりの大切さを実感することができた。「若い選手にも伝えていきたい。パラリンピックを含めて、将来につながる走りができた」。2日目は200メートルにエントリーしている。

(岡田剛) 

  

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