パラ陸上の日本選手権は3月21日、東京・世田谷区の駒沢陸上競技場で最終日を行った。4大会連続のパラリンピック出場内定を決めている山本篤（新日本住設）は、内定種目の男子走り幅跳び（T63）に出場。雨と風が降りしきる悪条件の中でも、5メートル88（追い風参考）で優勝した。女子では走り幅跳び（T63）で兎澤朋美（日本体育大）が、追い風参考ながら自身の持つアジア記録を超える4メートル52をマークした。
山本篤 過去に経験のないコンディション
第一人者もお手上げだった。男子走り幅跳び（T63）の山本篤は3回目の跳躍で3.3メートルの追い風と雨が入り混じる中、5メートル88を記録。自身のアジア記録6メートル70には遠く及ばなかった。
前日と打って変わって最終日は雨。風も選手たちを悩ませた。「これまでやって来た中で一番厳しいコンディションだったかもしれない。これだけ強く吹いたり止んだりするのは難しかった」
今回は6メートル20～30ほどの記録を狙っていた。しかし、目標達成は条件が整った上での話。2回パスして挑んだ最終跳躍も「今できる全力を出そうと思った」と意気込んだが、歩数が合わなくなってしまった。
好材料としては、助走のスピードが上がっていることだ。スピードを踏み切りから跳躍の動きにも生かそうとしている。「助走から踏み切りへ、やや上にベクトルが向かう部分ところで転換しなければならない」。今回の跳躍では結果に結びつかなかったが、本番までの課題として取り組んでいく。
今後は大会にも出場しながら、東京パラリンピックへの調整を続ける。「暖かくなれば記録も出てくると思っている」。夏にはすべてがかみ合った最高のジャンプを披露する。
兎澤朋美 挑むは世界の壁「5メートル」
女子走り幅跳び（T63）で内定している兎澤朋美は、4回目の跳躍で4メートル52（追い風3.2メートル）を記録した。追い風参考となったが、自身のアジア記録を超える好記録。悪条件だったが「最低限やることはやれた」と話した。
前日の100メートルでは自身のアジア記録を更新する16秒22で優勝。走りの基礎トレーニングに徹底的に取り組んだことが走力向上につながった。走り幅跳びの助走も「しっかりしてきた」と効果が表れている。
一方で、踏み切ってから早い段階で着地の動作に入ってしまう空中動作のロスを課題に挙げた。滞空時間を少しでも長くできれば、もっと記録を伸ばせる。
世界記録は5メートル。「内定はしているが、メダル争いには5メートルが基準になってくる。どこまで近づくことができるか」。現在地を冷静に把握し、大きな壁を破るために課題と向き合う。
古屋杏樹 自己ベスト更新はメダルに直結
女子1500メートル（T20）には、同種目で東京パラ出場の世界ランキング2位につけている古屋杏樹（彩tama）が出場。4分58秒97で2位だった。
20年9月の日本選手権で、自己ベストを6秒以上も一気に更新する4分36秒56をマーク。日本記録どころかアジア記録まで塗り替えるタイムで、ランキングは7位から内定圏内まで急浮上した。
今回のレースも、アジア記録を出した時と同じくスタートから飛び出した。独走で快調に飛ばしていたが、後半に失速し、蒔田沙弥香（愛知陸協）にかわされてフィニッシュ。「久々のレースで緊張もあった」と悔しさが残った。
それでも、初のパラリンピックは確実な状況。今大会は結果につながらなかったが、前後半でのレース切り替えを、さらに練習で磨いていく。「自己ベスト出せるように頑張りたい」。記録を超えた先には、輝くメダルが待っている。
「6位以内」ランクアップなし 今後の代表選考
今大会は東京パラ“内定番付”の対象期間。6位以内の記録を出せれば、4月1日付で確定するランキングで内定を獲得できるチャンスだったが、6位以内にランクアップできた選手はいなかった。
3月27、28日の日体大競技会がIPC公認で行われる予定で、同大会が6位以内を目指すラストチャンスになる。以降、世界パラ陸上競技連盟（WPA）の公認大会で、WPAが定めた記録を突破した選手に与えられる「ハイパフォーマンス割当枠」を巡って、選手たちが記録向上を目指す。
（岡田剛）
