全国各地にはいわゆる有力校による「御三家」が存在する。
青森県内で御三家といえば青森高校、弘前高校、八戸高校の3校。
ここでは筆者の母校である弘前高校を僭越(せんえつ)ながら紹介させていただきたい。
後編は、弘高名物「ねぷた製作」について。
青春のすべてを注ぎ込むといえば過言にはなるが、誇り高き伝統行事。
これは「ねぶた」じゃなくて、「ねぷた」です。
弘高生が生きる理由「弘高ねぷた」
弘前高校の生徒にとって勉強よりも大切なもの。それが「弘高ねぷた」である。
もう一度言うが、弘前高校の生徒にとって最も大切なのが……。
「ねぶた」は聞いたことがあっても「ねぷた」は聞いたことがない人、もしくはいずれも知らない人もたくさんいるだろう。さらには、どちらも同じだと思っている人もいるかもしれない。
いずれも8月上旬が例年の開催期間であるという部分は共通しているが、「ねぶた」が青森市内で行われ、立体的な武者人形が載った山車を曳くのに対し、「ねぷた」は弘前地区で行われ、武者絵が描かれた扇形の山車を曳く。
言葉だけでその違いは伝わるものではないので、ぜひ調べてみていただきたい。
津軽弁なら、もっと詳しく説明できるんですけどね。標準語だばまいね。
夏の弘高は「ねぷた」一色
「弘高ねぷた」は、弘前という理由で「ねぷた」を名乗っている。しかし、実は人形を用いた山車を製作するため、実は「ねぶた」と呼ぶ方が相応しいのだが、ここに触れるのは弘前市民の間では御法度である。
7月に入ると高校全体がねぷた一色になる。
授業が午前授業になり、午後は全校生徒が各クラスに分かれてねぷた製作時間になる。いわば、文化祭の出し物に近い。みんなで材料を発注し、木材の切り出しから人形の骨組み、電球の配線、染料の合成、和紙の貼り付けにいたるまでを男女和気あいあいと進める。文字通りの青春を謳歌できる時間だ。
そして、何よりも他の文化祭と異なる特徴が、男女全員が浴衣を着て市内を練り歩く点。8月に行われるねぷた祭に先駆けて、交通規制をかけて夜に市内の商店街を進む。
卒業してみて改めて見ると、母校ながら羨ましいと感じる。県内でもねぷた作りを毎年行う学校は弘前高校だけ。弘高生に与えられた特権である。
夏の弘高は「ねぷた」一色
もう一つの楽しみが女子の浴衣姿。弘前高校の男子はこの日の為に毎年364日を過ごしている。かっこつけて「そんなことない」など言おうものなら、つるし上げに遭うだろう。
クラスで写真を撮り、部活動のメンバーで集まって写真を撮った後は、もはやアイドルの撮影会状態。学年のマドンナとの撮影交渉を巡って激しい争奪戦が繰り広げられる。
もちろん、文化祭特有の「ねぷたマジック」もお約束である。ねぷたが終わると夏休みということもあってか、数えられないほどのカップルが生まれる。
しかし、クラスでの行動が多いということで、クラス外での恋愛をしていた生徒は苦い思いをするとかしないとか…(筆者談)。
弘高ねぷたは自己満で終わらない!
コロナ禍の中、2020年度はねぷた製作が行われなかった。かつて同校において、受験勉強に影響を及ぼすためとしてねぷた製作の是非について問われたことがあるようだが、2020年度卒業生の進学実績を見る限り、ねぷた製作による影響はあまりなさそうだ。
2021年はねぷた製作こそ行われたものの、市内での運行は中止された。来年こそ、完全な状態での「弘高ねぷた」をぜひ実現させてほしい。
ねぷた運行直前の数日間は、夜中まで作業が行われる。雰囲気はピリつくし、ミスやトラブルが間際のタイミングで起きた時のバッシングと言ったら思い出すだけで鳥肌が立つ。
しかし、ここで培われる瀬戸際での「根性」や「精神力」といったものが間違いなく受験に生きている。どこの学校の文化祭でもこうした「切羽詰まった状況」は起きるだろうが、弘高ねぷたは「地域のみなが待っている」という点で、その責任が格別に高いのだ。
勉強、部活だけの二刀流はどこの進学校でも存在する。勉強、部活、ねぷたの三刀流を実現してこそ、真の弘高生だ。
(おわり=mimiyori編集部・いいの)