【雑学】自然観察指導員の徒然草=見て楽しい 食べてもおいしい 野菜の花と実~後編

ソバの花

東京・善福寺公園のソバの花。白や薄いピンク色が一般的。2017年10月2日 (撮影:安藤伸良)

企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。

つれづれなるままに、今回は「野菜の花と実」の後編を紹介する。

コロナ感染症の拡大が続いて外出を控え、自宅で気晴らしに草花や野菜を育てているご家庭もあるのではないだろうか。拙宅は庭が狭いため、毎年プランターで朝顔と野菜を育てている。自分で育て始めてから気付いたのだが、野菜の花には見逃すのが惜しいほど綺麗なものが多い。

 

 

 

ツタンカーメンの先祖はエジプト王墓から出土

ツタンカーメンの花

東京の自宅に咲いたツタンカーメンの花。2011年4月10日 (撮影:安藤伸良)

「ツタンカーメン」は、マメ科エンドウ属の一年草。エンドウ豆の仲間で食用になる。

古代エジプトのツタンカーメン王の墓から出土したマメの子孫と言われている。日本には、1956年に米国から渡来した。

 

ツタンカーメンの実

自宅で育てたツタンカーメンの実。食用で、エンドウ豆より少し甘い味がする。2011年4月10日 (撮影:安藤伸良)

花期は4月。一般的なエンドウ豆の白い花に対して、ツタンカーメンは紫色の花を咲かせ、豆果もエンドウ豆が緑色に対し、濃い紫色になる(中のタネは緑色)。

 

カラスノエンドウの豆果

東京・石神井公園で見つけたカラスノエンドウの豆果。豆果は黒いが、花はツタンカーメン似。2010年5月25日 (撮影:安藤伸良)

春に野原でよく見られるマメ科の「カラスノエンドウ」はエンドウ豆の原種と言われ、豆果は黒くなるが、花はツタンカーメンの花によく似ている。

 

真っ赤な花を咲かせるソバもある

赤いソバの花

長野・白馬五竜に咲いていた赤いソバの花の群生。2009年10月11日 (撮影:安藤伸良)

「ソバ」は、タデ科ソバ属の一年草。中央アジア原産で古い時代に渡来した。

 筆者も好物の1つで、日本人には欠かせない食べ物。麺の形で食べるようになったのは、江戸時代になってからとされる。

 

花期は5~11月で、花は白または薄いピンク色。ところが以前、長野県の白馬へ行った際に赤色のソバの花が咲いているのを初めて見て驚いた。

 

これは、1980年代にヒマラヤ地方から日本人の研究者がタネを持ち帰り、気候風土の違う日本で苦労しながら作出した「高嶺ルビー」と名付けられた品種。収穫された赤ソバ粉でつくられたそばもあると聞くが、こちらは食べたことがないので味が気になるところ。

 

意外と知らない食卓野菜の花

ジャガイモの花

東京・善福寺公園近くで見かけたジャガイモの花。2007年6月9日 (撮影:安藤伸良)

「ジャガイモ」は、ナス科ナス属の多年草。南米のアンデス山脈原産で、ナス科だけあってナスの花と似ている。

 花期は5~6月。葉の付け根から花茎を長く伸ばし、先端に多数の花を付ける。花の色は品種によって違い、白や薄紫、ピンク色などがある。

 清楚な感じの美しい花で、フランス王妃マリー・アントワネットが好んで髪飾りにしていたことでも知られている。

 

ニンジンの花

長野・小布施に咲いていたニンジンの花。2008年10月15日 (撮影:安藤伸良)

「ニンジン」は、セリ科ニンジン属の二年草。

 中央アジア原産で、16~17世紀頃の江戸時代に中国から伝わってきた野菜とされる。育てやすい特徴があるため、すぐに全国に広まった。

 花期は6~8月。花は白く、5枚花弁でセリ科特有の散形花序をした形が特徴的。

 

ダイコンの花

東京・善福寺公園近くで見つけたダイコンの花。2010年4月9日 (撮影:安藤伸良)

「ダイコン」は、アブラナ科ダイコン属の越年草。地中海・中央アジア原産で、日本へは中国経由で渡来し、9世紀頃にはすでに栽培されていたとされる。

 花期は4~5月。茎先に総状花序を出し、白または淡い紫色をした十字形の4弁花を多数付ける。

 一般的には、花が咲くとスが入って(成長しすぎて中に空洞ができて)大根は食べられなくなるため、家庭菜園でも農家でも花が咲く前に収穫する。あまり見ることがない花だけに、見つけた時はほっこりした気持ちになる。

(安藤 伸良)

 

 

 

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