企業戦士として働き尽くした会社を定年退職後、一念発起で転身した自然観察指導員の写真コラム。
つれづれなるままに、今回は「身近な有毒植物」を紹介する。
草本や樹木には、人間(動物)にとって有毒なものも少なくない。サイカチ、バラ、カラタチ、ハリギリなど棘(とげ)のあるものや、ウルシ科のヤマウルシ、ツタウルシ、ハゼノキ、ヌルデやイチョウの銀杏の実など人によってはかぶれるものなど多種ある。
ここでは普段から見かける植物で、触れてはいけない、あるいは食べてはいけない有毒なものを取り上げる。美しさに誘われて近づくと、かなり危険かもーー
毒矢に使われたヤマトリカブト
「ヤマトリカブト(山鳥兜)」は、キンポウゲ科トリカブト属の多年草。本州(中部地方以北)の山地や林縁に生える。開花時期は8~10月。花は青紫色の5枚のガク片からなり、上の1枚が兜状になる独特の形をしている。
世界最強の有毒植物ともいわれ、草全体が有毒。特に根は猛毒のアルカロイドを含む。かつては戦争や狩猟などで毒矢に使われた。若葉は山菜であるニリンソウの葉と間違えやすく誤食による死亡例もある。
走り回るほど苦しめられるハシリドコロ
「ハシリドコロ(走野老)」は、ナス科ハシリドコロ属の多年草。本州、四国、九州の山地などの湿った林内に生える。花期は4~5月で、紫色で約2センチの鐘形の花が下向きに垂れ下がって咲く。
これも全草にアルカロイド系の毒をもつ猛毒植物。誤って食べると嘔吐や痙攣などの症状が現れ、苦しみのあまり「走り回る」というのが名前の由来。
ゴボウでもブルーベリーでもないヨウシュヤマゴボウ
「ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡))は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。北米原産で、明治初期に渡来し、日本全国に広まった。道端や空き地で普通に見られる。
花期は6~9月で、長い花序に白色または薄い紅色で直径5~6ミリの花を付ける。果実は約8ミリの球形で黒紫色に熟す。実も根も有毒で、特に根は食用のヤマゴボウに似ているため要注意。実も、ブルーベリーと間違えて誤食して中毒症状が出たとの症例がある。
ニラと間違えると危険なスイセン
「スイセン(水仙)」は、ヒガンバナ科スイセン属の多年草。地中海沿岸原産で、古い時代にシルクロードを通り中国経由で渡来したと言われる。関東以西、四国、九州の海岸などに野生化している。
花期は12~4月で、20~40センチの花茎を伸ばし5~7個の白花を横向きにつける。全草が有毒で、特に球根は毒成分が多い。食べると吐き気、下痢、発汗、頭痛の症状が出る。恥ずかしながら筆者も経験があるのだが、葉をニラと間違えて誤食するケースが多い。
(安藤 伸良)